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ナポリタンを見て「真っ赤なうどんだ!」と思ってた時代

――他に役作りで心がけたことは?

松本 スタッフの方が用意してくださった舎監さんの本や資料を読ませてもらいました。当時トランジスタラジオ工場で働いていた人たちが今でも仲が良くて、同窓会を毎年開いているお話とか。ナポリタンを初めて見た時に「真っ赤なうどんだ!」と思ったっていう話なんかもあって面白かったです。何もかもが今とは違う時代なんだなあと。

 

――寮に入った日に出たカレーにみんな驚くシーンがありましたよね。

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松本 お肉がたくさん入ったカレーなんて、田舎じゃ食べられなかったんだと思います。卵があるだけで嬉しい。それに、澄子や青森出身の豊子は中学を卒業して15歳で東京に出てきてますから……。

――ご自身でも15歳で上京なんて考えられない?

松本 もちろん。ましてやその当時はスマホなんてないですからね。それにお金もかかるし新幹線があるわけでもないし、今みたいに簡単には帰れない。相当な覚悟を持って東京に来ているはずです。だから澄子もボーっとしているように見えて芯が強くて肝の据わった子なんだろうなと。

――現実でもなかなか大変なことは多かったようですからね。

松本 ホームシックになる子もいっぱいいたみたいですしね。乙女寮のようにうまくいくばかりではなかった。田舎の方では電話がない家もあったわけですから、みんなスマホを持っている今とは大違い。でも、だからこそみんなが仲良くなるスピードが早いのかなと、台本を読んでいて思いました。みんな田舎から出てきて、居場所はそこしかない。家にお金を送るという目的も一緒だし、スマホがないから逃げ出す場所もない。乙女寮のみんながあっという間に仲良くなるのも、不自然なことではないんでしょうね。自分が生まれていない時代のことを知って、その時代に生きた人を演じるって本当に勉強になるし、楽しいって思っています。

 


次回は松本さんの高校時代、演劇部での青春についてお話を伺います。

まつもと・ほのか/1997年生まれ。大阪府堺市出身。主な出演作品に映画『青空エール』(16年)、『MATSUMOTO TRIBE』(17年)、主演舞台『ヨミガエラセ屋』(16年)、テレビドラマ『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』『ひよっこ』など。

写真=鈴木七絵/文藝春秋