仕事は片付いているのに、つい遅くまで会社に残ってしまう。会社を出ても、家に帰る気が起こらない。

 心当たりはありませんか?

「そんなものでは?」と軽く考えてはいけません。あなた(あなたの夫)は、「帰宅恐怖症」かもしれず、放置すれば、「不治の病」になるかもしれないからです。

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『帰宅恐怖症』(文春新書)を上梓したカウンセラーの小林美智子さんが実例を紹介し、問題の根深さを指摘します。

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『帰宅恐怖症』(小林 美智子 著)

 夫が家に居心地の悪さを感じて、家に帰るのが怖くなる「帰宅恐怖症」。帰宅が怖くなってしまうのは、「妻が怖い」からです。

 常に妻の顔色をうかがい、妻とのやりとりに疲れ、帰宅が億劫になり、仕事が終わっても会社に居残り、まっすぐ家に帰らず、わが家を目の前にしても近くの公園のブランコで家の灯りが消えるのを待つ……世の中は「帰宅恐怖症」の夫で溢れています。

 笑いごとではありません。放置すれば、「不治の病」となり、いずれ「別居」か「離婚」。

 私は、「離婚・夫婦問題」のカウンセラーをしています。2006年にカウンセリングを始めてから、これまで2000件を超える相談を受けてきました。

「離婚・夫婦問題」のカウンセリングを重ねるなかで、気づいたことがあります。世の中には、「妻が怖い夫」と「夫に怖がられる妻」がいかに多いか、ということです。

「妻が怖い!」男性相談者の体験談

 以下は、「妻が怖い!」男性相談者の体験談です。

「妻が怖いです。しゃべり方や仕草まで。でも、これまで、その怖さを自分では認めないように反発して、私が怒鳴ったり、互いに何も喋らない状態にしてきました。そんなことを今まで数えきれないくらい繰り返してきましたが、内心は、常にビクビクしていました」(医療関係・48歳)

「妻のグチが続いたり暴言が始まると、ものすごく緊張して、嵐が過ぎるのをただただ待つように小さくなっています」(会社員・41歳)

「妻は『言いたいことを怒らずにしゃべって!』と言いますが、聞いてくれたとしても、『何か仕返しがくるはずだ』と思ってしまいます。怖いです。どうしてよいか分かりません。仲が良い時は、何も問題はなくて良いのですが……」(公務員・37歳)

「普通に話していると思っていたら、妻が急に怒り出してしまう。その理由が分からないので、また、いつこのような状況になってしまうのかと、ドキドキしてしまいます。だから、妻との接触を避けようとしています」(金融関係・54歳)

「妻が納得する返事を、一生懸命考えても見つからず、ついつい、いつも黙ってしまいます。実は怖いんです」(営業・34歳)

「喧嘩の後の妻の態度が怖くてたまりません(不機嫌そうな顔・無視・舌打ち・睨みつける・呆れ顔など)」(金融関係・51歳)

「喧嘩を引きずり、『きっとまだ怒っているのだろう』と思うと、家に帰りたくなくなるし、玄関のドアを開けるのが怖くなりました」(公務員・43歳)

「また喧嘩になったりしたら嫌だから、仕事が終わっても会社に居残ったり、漫画喫茶で時間を潰してから帰るようにしています」(IT関係・37歳)

「帰宅前、キレイな夜景などを見て、心を癒されていると、『このまま、ずっとここにいたい』と感じて、情けなくなります」(教育関係・42歳)

 心当たりはありませんか? 「確かに自分も妻に対してこう接している」という男性読者も、「ひょっとして自分は夫にこう思われているのかもしれない」という女性読者も、いらっしゃるのではないでしょうか?

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