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ナイキ「厚底シューズ問題」と「レーザーレーサー問題」を同列に語ってはいけない理由

ナイキ「厚底シューズ問題」と「レーザーレーサー問題」を同列に語ってはいけない理由

今回のシューズ革命は“市民革命”だ!

2020/01/23
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フルマラソン2時間切りを果たした“えげつない厚さ”

 このときは2時間切りを果たせませんでしたが、昨年10月、特設レースでキプチョゲ選手はナイキが新たに開発したシューズを履いて、非公認ながら人類初の2時間切りを果たします。

 このシューズが、カーボンプレートを3枚重ねたうえに、前足部にエアを入れたとんでもなく分厚い靴底の「アルファフライ」です。ヴェイパーフライは禁止されないだろうと報じたザ・ガーディアン紙もこの靴は規制の対象になると伝えているほど、その厚さはえげつない。

「アルファフライ」は今のところNIKEと契約する世界的トップアスリートたちにレースで使わないことを条件にテストで配られていますが、(レースで使う際はテープなどでソールが見えないようにマスキングを施す)この靴の登場が今回の規制の流れの一因となっています。この調子で際限なく厚くしていいのか、どんどんボヨンボヨンしてしまっていいのか。例えるなら、F1が速さを求めるからといって、ジェットエンジンの搭載を許すかということ。これまで陸上シューズの「より軽く・より薄く」という概念で進んでいた開発がクッション材の進歩やカーボンシートをよりたわませるため「より軽く・より厚く」という報告に進み始めた。ここで新たにレギュレーションを作る必要がうまれたという話なのです。

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ヒューストンで話題をさらったアディダスの超厚底

 ちなみに僕は先日、アメリカで行われたヒューストンハーフマラソンを見に行ってきました(新谷仁美選手が1時間6分38秒の日本新記録で優勝しました!)。

 このレースは、2月に行われる東京五輪のアメリカ代表選考レースの調整として最適な大会で、多くの有力選手がエントリーしました。僕はここで、「アルファフライ」を履く選手がいるかに注目をしていたのですが、履いている選手はいませんでした。

 現地で話題を集めたのは、ナイキではなく、アディダス。なんとこのレースでアディダスは超厚底シューズを投入してきたのです。笑ってしまうほど厚い底。ここからもシューズの進化は「より軽く・より厚く」の方向に進んでいることが読み取れると思います。でも、これ、だれが観ても「やりすぎ」感がありますよね。この写真をツイッターにアップしたところ、日本では全く話題になりませんが、世界の陸上オタクにあっという間に広まり「やりすぎじゃね」という論争がすでにうまれています。

アディダスの超厚底シューズ ©EKIDEN News

 もうひとつ、日本でまったく報道されていませんが、実はトラックスパイクも調査の対象に入っています。