木曽功 元内閣官房参与、加計学園理事
「『一強』だからだ。いいとか悪いとかではなく『一強』だからできる」
朝日新聞 6月1日
獣医学部新設に向けて前川氏に働きかけていた官邸中枢は和泉洋人氏だけではない。当時、内閣官房参与だった木曽功氏は昨年8月、前川氏に対して「文科省は(国家戦略特区)諮問会議が決定したことに従えばいいから」と特区推進を要請していた(『週刊文春』6月8日号)。
木曽氏は16年4月、加計学園理事兼千葉科学大学学長に就任している。千葉科学大学は加計学園傘下の大学。つまり、木曽氏は加計学園の利害関係者でもあるのだ。木曽氏は前川氏に会って獣医学部の件を話したことを認めている。
「巨大な忖度の塊」
また、朝日新聞の取材に対して木曽氏は「総理のご意向」文書に関して「違和感はない」「確かにこういう状況は起きていたと思う」と振り返っている(朝日新聞 6月1日)。また、獣医学部新設に向けた一連の経緯について「巨大な忖度の塊」「(関係者は)総理マターで最速でやらないといけないと思っていたのだろう」と回答している。森友学園問題とまったく同じだ。では、なぜそんなことが起きてしまうのか? 木曽氏は「(安倍首相の)『一強』だからだ」と明言した。
中曽根弘文元外相は二階派の会合で、イギリスのアクトン卿の「絶対的な権力は絶対的に腐敗する」という言葉を引用し、「今がそう、ということじゃありませんけど、常に謙虚に政治を行っていかなければ」と語った(朝日新聞 6月1日)。ちなみに中曽根氏の妻は前川氏の実妹である。
「あったものを、なかったことにできない」と前川氏は語ったが、官邸も官僚も「なかった」の大合唱だ。「一強」はこのまま押し通すつもりだろう。今の日本は「なかった」と言い張れば「あったもの」でも「なかった」ことになるのだろうか? 前川氏がボランティアとして働いていたNPO法人キッズドアの渡辺由美子氏は、「自分たちの都合のいいように、事実を捻じ曲げる」「自分を守るためには、嘘をついてもいい」という態度は、一連の疑惑に対する官邸と官僚の対応と、いじめ問題を「なかった」と報告する教育委員会や学校に共通していると指摘している。