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大田泰示が新しく生まれ変わった姿を見せた第3戦

 ところが第3戦はもっと劇的だった。ファイターズの先発はNPB未勝利の村田透だ。2007年の巨人ドラフト1位投手。たった3年で戦力外になり、米球界で武者修行して戻った。昔とはスタイルが一変している。動く球主体だ。この日は右打者に食い込むツーシームがよかった。巨人と対戦するのは必然だったろう。これを乗り越え勝利しなければ、村田のやってきたことは無に帰してしまう。

 チームは4点取ってくれた。何とかして勝ちたい。5回表、バタバタして1失点したのは勝ちを意識したせいだろう。そりゃ意識もする。回り道して32歳だ。村田があきらめずに野球を続けて、阿部慎之助と対峙してることが奇跡なのだ。栗山監督は早目の継投に踏み切った。村田は5回を1失点(69球、被安打6)でまとめる。

 物語には美しいつづきがあった。7回裏、大田泰示がダメ押しの8号ソロだ。2ボールからライトスタンドに狙い打ちだ。この右方向のホームランが大田の新しい武器だ。しかも投げていたのがトレードの相手、吉川光夫だった。

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「古巣対決」でひと際、輝きを放っていた大田泰示

 僕はトレードの明暗とか損得みたいなことを血の通った人間相手にいうのがあんまり好きじゃない。吉川は西武戦の先発から中3日のリリーフ登板、しかも3イニング目という起用だった。が、真っ向勝負して大田が打ち砕いた。新しく生まれ変わった姿を見せた。この3連戦、実に10打数7安打2ホームランのべらぼーな活躍だ。

 今やメディアはここぞとばかりに「巨人を出た選手は活躍する」と報じている。巨人のチーム編成や育成能力に疑問を投げかけ、ファイターズのそれに賛辞をくれる。それは願ったり叶ったりだ。現実にうちの生命線なので、多少、大袈裟に伝わってもオッケーだ。「ファイターズは選手を育てる」「チャンスを与える」「自発的に伸び伸びやらせる」これからプロを目指す若者にじゃんじゃん広まってほしい。

 後に振り返るとあの試合がターニングポイントだったということがある。この3連戦は10年後、あれが決定的だったと言われるんじゃないか。僕は書き残すことにする。ファイターズは損得勘定に長けて、商売上手なのではない。人を生かす発想をするチームなのだ。戦績を見るとまだまだ5割は遠いが、胸を張ろう。今シーズンはこんなドラマが見られたよ。

10、11日の巨人戦で配られた大谷翔平の二刀流ボブルヘッド ©えのきどいちろう

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