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大人自身が育たなければならない気持ちになる。

提供:山本一郎

 確かに、ロボットは死なない。食事も要求しないし、トイレの世話もない。人間の邪魔になるような主張はしないのがロボットだ。でも、人間がいくらロボットを好きでも、いずれ飽きてしまう日が来るのではないか。目の前を動き回るCozmoもBB-8も、子供の成長とともに箱に仕舞われ、押し入れに行く日がやがて来る。ペットと人間の付き合いのように、ロボットと人間の付き合いも、いずれ何らかのロスを感じる日が来るのではないだろうか。

 思ったようにロボットが動かないと、三男が癇癪を起こすようになった。長男や次男が、プログラミングをすれば動くようになるんだよ、という。さすがに展開が早すぎるだろ。仕方なしに、タブレットに初歩のプログラミングアプリを入れてやり、仕組みを教えるのに一週間かかった。何かを乗り越えて子供を育てるというのは、大人自身が育たなければならない気持ちになる。私の親父やお袋も、そういう気持ちで私に接していたのだろうか。

 親友を失って元気のないわさびも、宿敵がいなくなって少し領土の広がったさん太も、少しずつ元の生活を取り戻していくようだった。ただ、さくらのお気に入りだったローズ柄の毛布はわさびのものになり、在りし日のさくらを懐かしむように、わさびは毛布の上を転がっては悲しそうにさくらを呼んだ。

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 いつの間にか、さくらが食事をしていたローズ柄のお皿は、この人工知能を積んだ愛玩用ロボットの発進基地になっていた。小さなロボットがさくら愛用の皿に小箱をせっせと積んだり降ろしたりしている。まるでさくらのお下がりを、Cozmoが受け継いだかのように使っているのを見て、とても、とても静かな気持ちになった。あっと思って、いつもさくらが子供たちの遊ぶのを見下ろす箪笥の上を振り返った。そこにさくらはいるはずがなかった。

 でも、確かに聴いたのだ。さくらが「にゃおん」と鳴いたのを。

この物語はフィクションです。言わなくても分かってるだろ。