不条理を条理に変える男、久保康友
でも、原曲キーの『Everything』より出囃子のMassive Attackより、もっともっと不条理なこと。それは「FAでベイスターズに来た」ということではないでしょうか。
中畑清前監督に「うちのエースになってくれ」と口説かれたのが決め手になったと言われていますが、果たしてそれだけだったのか。だってFAでベイスターズ(2014年)ですよ。コツコツと貯めた権利でベイスターズ。ピッチャーがハマスタ擁するベイスターズ。たとえるならそれは「太陽が地球の周りをまわってる」と信じられている世界で、ただ一人「いや動いているのは地球だ」と唱えるような、にわかに理解しがたい行為です。
しかしこうも思うのです。なかなかに不条理なトレードでロッテから阪神へ、阪神では先発希望にも関わらず自身の不調やチーム事情で抑え転向を余儀なくされた久保。様々な不条理を知る久保だからこそ、自ら不条理に飛び込み、選手としての条理を証明したかったんじゃないかなと。
永遠の異端もなければ、正統の安住もない。ベイスターズが入る悦びあふれるチームになったとき、初めて久保の条理が証明される。あぁそのためだったら、私、羽毛布団でもゲルマニウムローラーでもイルカの絵でも買う所存です。言わせてください。それでも地球はまわってる。それでも久保はMassive Attack。
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