『字が汚い!』著者・新保信長 ©原田達夫/文藝春秋

 手紙の宛名や冠婚葬祭の芳名帳――PCの普及でペンを握ることが少なくなったとはいえ、字を書く機会は誰にもある。そんな時、自分の筆跡に唖然とすることはないだろうか。ああ、恥ずかしい。

「ペン字ハウツー本があれだけ何種類も出てて書店にコーナーがあるくらいだから、字で悩んでいる人は多いんだろうと思ってはいましたが、反響は想像以上でした」

 話題の本『字が汚い!』(文藝春秋)を上梓した新保信長さんも、自分の字に絶望を覚えた1人。刊行するや、様々な人から己が字の汚さを訴えられているという。

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「ネットでは『こんなのは汚いうちに入らない。俺のほうが汚い』と対抗意識を燃やしてくる人もいました(笑)。自分としては普通に、字に関する素朴な疑問をたどっていっただけなんですけどね」

 ペン字講座に通い、チラシの字を眺め、政治家の揮毫に思いを馳せ、友人の悪筆に腹を抱える新保さん――悪戦苦闘の経緯が綴られた本書は涙と笑いなくして読み通せない。

「結論としては、いわゆる美文字ではなく、そこそこ大人っぽくて味のある“いい感じの字”を目指そうと思うようになりました。理想は写真家の荒木経惟さんの字。大人の色気と愛嬌が同居して、とても素敵ですよね」

字が汚い!

新保信長

文藝春秋
2017年4月14日 発売

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