「商売」にも「犯罪」にも利用される
さて、そのような崇高な概念であるはずの反日感情なのであるが、それが表出する場面を見てみると、崇高どころか稚拙で荒唐無稽なものが多い。反日感情の表出の事例としてよく知られているものとしては「デモ」がある。日本大使館の前で反日団体が繰り広げている様々な反日デモが有名であるが、日本の国鳥であるキジを生きたまま裂いたり、大使館の建物に卵や塗料の入った瓶を投擲したり、日本の首相の顔を布にプリントして口の部分を縫う(「妄言」を糾弾するという意味があるらしい)などの奇行が数多く見られる。中にはデモ参加者が指を切り落としたり、焼身自殺を図ったりしたケースもある。外国公館に対する破壊行為は如何なる場合でも批判の対象になるはずだが、韓国ではそうした批判はほとんど起きない。
次にスポーツ観戦における無軌道な応援やパフォーマンスが挙げられる。サッカーの日韓戦で「歴史を忘れる国には未来がない」という横断幕を掲げて応援したり(二〇一三年七月のサッカー東アジアカップ)、サッカーの選手が「独島は我が領土」というプラカードを持って競技場を走り回ったりした行為(二〇一二年のロンドン五輪)はかなりの物議を醸した。挙句の果てには「日本の大震災をお祝います(原文ママ)」という常軌を逸した垂れ幕を掛けたりした事例(二〇一一年のアジア・チャンピオンズリーグ)もあった。さすがにこの垂れ幕に対しては韓国国内からも批判が出たのだが、これは極めて稀なケースである。大抵の場合、何をやっても批判されない。二〇一一年のAFCアジアカップの日韓戦では韓国の選手がゴールを決めた後、日本人を猿になぞらえたパフォーマンスを行って物議を醸した。この背景には日本人に対する「文化優越意識」があるが、他民族を畜類に譬えて侮辱するのは明らかな人種差別である。しかし、この選手が「(観客席の)旭日旗に腹が立った」という言い訳をしたため、韓国内での批判は消散した(実際には観客席には旭日旗はなかったことが明らかになっている)。
こうした無批判な反日感情は様々な商売にも利用されている。最近は独島問題などによって反日感情が盛り上がるたびに関連商品が売り上げを伸ばす、という現象が見られる。その最も成功した一例として、大邱銀行という地方銀行が二〇〇三年に開設した「独島支店」を挙げることができる。これはネット上のサイバー支店であるが、この支店に口座を持つ顧客は金利・手数料を優遇されるということもあって、三十万人が口座を開設したという。二〇〇五年には企業銀行が税引き後の利子の二パーセントを独島関連団体に寄付する「独島は我が領土通帳」を販売した。一部では「反日感情を利用した商法」という批判も提起されたが、反日感情がネタになっている限り、そうした批判が共感を得ることは少ない。
騙した側も騙された側もニセモノ
このように反日感情が商売に利用され始めると、当然のことながら犯罪に利用する輩も出てくる。その代表的なものが「日帝補償金詐欺」である。これは何かというと、日本統治下の徴用に対する補償を日本政府から受けられると言って老人に接近し、手数料の名目で金を騙し取る詐欺である。二〇〇五年に発覚したこの新手の詐欺の被害者は約一千人、被害額は一億五千万ウォン(約一千五百万円)にのぼった。呆れたことに警察が被害者のうち二百五十人を調べた結果、その八割ほどが植民地下の徴用とは何らの関係もなかったことが判明した。騙した側も、騙された側も、日本をネタにしてひと儲けしようと企んでいたわけである。ちなみに犯人は「アジア太平洋戦争犠牲者遺族会」という団体の関係者だったという過去があり、その際の活動経験を詐欺に活用したと見られている。
その後も同様の詐欺事件は後を絶たず、高額の被害が相次いでいる。こうした詐欺が横行する背景には、「反日」が崇高な国民道徳として無批判に崇められているという韓国独特の事情がある。詐欺の被害に遭った老人たちも、反日活動を行っている殊勝な団体が、よもや詐欺をはたらくとは思ってもいなかっただろう。反日無罪が詐欺の隠れ蓑になったわけである。