2024年3月に放送作家を引退したのを機に、「小説SMAP」をうたった『もう明日が待っている』を刊行。SMAPの素顔を余すところなく描き出したのが鈴木おさむさんである。
テレビの世界を離れて半年。いまこそ語れる「SMAP論」を、存分に披露していただこう。今回はSMAPの末っ子・香取慎吾の、内に秘めた人知れぬ葛藤について。(全2回の1回目/後編に続く)
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SMAP結成時は最年少の11歳
いつも屈託のない笑顔を見せて、明るい印象なのが香取慎吾さんです。そんな彼はじつは、一歩引いて全体を見ることのできる、「大人」な人間です。
SMAP結成時は最年少の11歳。早い時期にデビューして、子どものころから大人の仕事の世界を見てきた影響は大きいのでしょう。
SMAPのなかでは、中居正広さんとともにいち早くバラエティの世界に飛び込んでいき、またたく間にそのジャンルに馴染み、才能を発揮していきました。1994年に『笑っていいとも!』のレギュラーに抜擢されたときは、まだ10代でした。それでも理解力に優れ頭の回転も早いので、番組における自分の立ち位置とキャラクターを、すぐに形成することができました。
1996年に『SMAP×SMAP』が始まると、ふだんは弟キャラなのに、「最後は慎吾ちゃんに任せれば何とかしてくれる」という存在感を確立します。いつだってその場にドライブ感と爆発力を生み出してくれるのが香取さんでした。
彼は現場で感情的になることがありません。空気がピリついているときには、その空気を楽しむかのようにひとりニヤニヤしています。どんなときも客観視ができて、余裕があるのです。そうしてさりげなく、その場の空気を和らげる。まさにムードメーカーです。
最後尾で見守る裏リーダー
察する力もすごい。『SMAP×SMAP』の番組内で、メンバーだけで行く5人旅をしたときも、サプライズ企画を成立させるのに最も尽力したのは香取さんでした。旅の現場にスタッフが近づけないなか、番組としては5人にどうしてほしいのか、求められているのは何かをいち早く察知し、メンバーをさりげなく誘導していく。そういうことが自然にできてしまうので、スタッフからはいちばん頼りにされていました。
もともとたいへん気が利く人だったのでしょうけれど、長年SMAPの「末っ子」をやり続けたことで、資質が磨かれていった面もあったはず。「お兄さんたち」がどんなわがままを言ったり無茶振りをしても、最後には自分が何とかしてやろうというスタンスをとり続けてきました。
元来ひじょうにスター性のある人だというのに、SMAPの5人でいると、ときに自分を押し出さず引き立て役に回ることもできる。つねに全体を見て立ち回っていました。
SMAPにおいて、表のリーダーとして皆を引っ張っていくのが中居正広さんだとしたら、最後尾でだれかが遅れをとらないよう見守る裏リーダーは、まちがいなく香取慎吾さんだったと言えます。