1997(平成9)年5月27日、神戸の市立中学校の正門に、11歳の男児の切断された首が置かれているのが発見される。男児はその3日前より行方不明となり、前日に公開捜査が開始されたばかりだった。その遺体の口にねじ込まれた紙片には、「さあゲームの始まりです/愚鈍な警察諸君/ボクを止めてみたまえ」などと挑発的な文章が、「学校殺死の酒鬼薔薇」の署名とともに書かれていた。

犯行声明文 ©時事通信社 

 同じ中学の近辺では、同年3月16日に女児2人が殺傷される通り魔事件が発生、また中学の正門やその周辺では、殺された猫や鳩の死体が置かれるなどの異常事態があいついでいた。6月4日には神戸新聞社に、「酒鬼薔薇聖斗」の署名で「ボクが子供しか殺せない幼稚な犯罪者と思ったら大間違い」などと書かれた声明文が届けられる。この間、目撃情報などから犯人の推理も、メディアを通じて盛んに行なわれた。

 だが、いまから20年前のきょう、6月28日夜、兵庫県警は一連の児童殺傷事件の容疑者として、中学3年生(14歳)の少年を逮捕した。少年逮捕は社会にさらなる衝撃を与え、少年法のあり方についても議論が巻き起こる。逮捕翌日よりネットには少年の実名が飛び交い、7月2日には写真週刊誌『フォーカス』に彼の顔写真が掲載され、掲載誌の販売を自粛する店が出る一方、売り切れ店も続出した。なお、少年法がより厳罰化されたものへと改正されたのは、この3年後、2000年のことである。

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 犯人の少年に対しては、医療少年院送致の処分決定が下され、10月20日に神戸少年鑑別所から東京の関東医療少年院に移送された。その後、少年は精神科医の手厚いケアのもと、職業訓練を施されるなど更生に努める。2004年3月には仮退院が認められて社会復帰した。2015年に元少年は手記を刊行し、これを受け翌年には『週刊文春』が当人に直接取材を行なうなど、あらためて波紋が広がる。