「謎の魚」は手嶌広報の父が捕獲した説
だから、謎の魚を見ると、なぜかそんな海に関する昔話を思い出してしまった。ん、待てよ? そもそも、この謎の魚は手嶌の父の定置網に引っかかって、それを捕獲して広報をやっている息子のために「面白いヤツだからPRに使ってみたらどうだ!」という事になったのではないのだろうか。突然、そんな妄想を思いついたので本人にぶつけてみると、なぜかまんざらでもなさげな回答が返ってきた。
「ありえますね。父はあんこうを獲ったりもしますし。時には漁業以外にも水族館の関係者や学者の方を乗せて深海の魚を獲ったりしますよ。有名なテレビ番組の企画でサメを探しに行ったこともあります」
主な活動地域は東京湾から浦賀水道周辺。この三浦半島と房総半島に挟まれた海峡で高足ガニをメインに深海魚やクロムツ、アカムツ、アンコウなども捕獲している。ある時、設置された網に謎の魚が引っかかっていたという事があっても決しておかしくはない材料がそろっている。
「助けてくれてありがとう!代わりになにか恩返しをするよ」(謎の魚)
「面白いヤツだな。じゃあ、息子が働いている球団を盛り上げるのを助けてやってくれ」(手嶌父)
そんな会話があり長五郎丸は幕張浜へ。涙なしには聞けないストーリーを勝手に妄想してしまった。
考え出すとますますそのように思えてくるから世の中は不思議だ。そういえばこの新キャラクターのデビュー時から手嶌はやけに気にしていた。試合中の5回裏終了後に登場するたびに「目が離せませんよ」と口にしてグラウンドを必死に見つめていた。事実、二人(一人と一匹)は異常なほど仲がいい。正史ではないが裏設定として、とても面白いような気がする。海の男とプロ野球選手だった息子と謎の魚。私は勝手に親子と一匹の魚の友情物語に壮大なドラマを感じてしまった。ああ、まさか、こんなに時が流れて海の話が一つに繋がるとは。事実は小説よりも奇なりである。
梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)
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