いまから70年前のきょう、1947年7月8日、アメリカのニューメキシコ州にあるロズウェル陸軍航空基地で広報官を務めていたウォルター・ハウト中尉が、同基地付近の牧場に円盤が墜落し、その機体の残骸は第8空軍第509爆撃大隊情報部によって回収されたと発表した。

 ちょうどその2週間前の6月24日には、ケネス・アーノルドというセールスマンが、自家用機で飛行中、ワシントン州レーニア山上空で空飛ぶ円盤を目撃したと記者たちに話していた。以後、米国各地で円盤の目撃報告があいつぐことになる。それだけに、軍が円盤を回収したとの発表は注目され、現地の新聞の一面で報じられたほか、外電で世界中に伝えられた。

 しかしロズウェル基地の発表は、じつは基地の大佐の正式許可のないまま行なわれた非公式なものだった。しかも報道された直後には、軍は「回収したのは円盤ではなく、気象観測用の気球だった」と訂正している。これによりロズウェルの円盤騒動は長らく忘れ去られた。それが1980年前後になって、UFO研究者による検証本が刊行されるなど、再度関心を集めるようになる。

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 1994年には米会計検査院(GAO)と空軍がそれぞれ調査を行ない、レポートを公表する。GAOは「円盤が墜落したという証拠は何も見つけられなかった」と報告。これに対し空軍は、回収されたのは円盤でも気象観測気球でもなく、当時のソ連の原爆実験を探知するモーガル計画で使用された気球であったと発表した。モーガル計画における気球の打ち上げは、47年5月から9月のあいだに、ロズウェル近くのアラモゴード基地より極秘で15回ほど行なわれたが、このうち6月4日に打ち上げられた気球は回収されず、行方不明となっていた。空軍は、この気球こそ円盤の正体だと結論づけたのである(皆神龍太郎『UFO学入門 伝説と真相』楽工社)。

 なお、ソ連が原爆実験に初めて成功したのは、ロズウェル事件の2年後の1949年である。しかしアメリカは、ソ連が原爆開発を進めていることを察知し、秘密裡に調査を進めていたのだ。空飛ぶ円盤を生んだのは、得体の知れない社会主義国家に対するアメリカ人の恐怖心であった――とも言えるかもしれない。

アメリカ・ニューメキシコ州、ロズウェルの円盤墜落場所 ©時事通信社