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ライバル入団、若手の台頭……33歳の現在地

 2010年には同じ84年組で外野手の長野久義がドラ1入団。松本にはないパワーという長所があったライバルは1年目に新人王、2年目に首位打者で瞬く間に不動のレギュラーとして定着。さらに90年生まれの橋本到や立岡宗一郎といった俊足巧打の若手外野手も台頭。その上、15年ドラフト2位でスピードが武器の重信慎之介(早大)を指名。

 この3人は皆左打ち外野手で、松本とプレースタイルが丸被り。そうなると当然、監督はより若い選手を使うだろう。一般企業と同じ。スキルにたいして差がないなら、伸び代を期待して若手社員にチャンスを与えるよ。給料も安いし。これぞアラサープレイヤーの憂鬱。13年91→14年75→15年44と年々出場数を減らし、由伸監督に代わった昨季も52試合で打率.174に終わった。

 7月3日に33歳になった元新人王は、今季1軍出場ゼロだ。現在、センターのポジションは日本ハムからFA移籍して来た陽岱鋼が守っている。ジャイアンツ球場で若手に混じり日焼けしながらプレーする松本はイースタン58試合で打率.267。チームトップの9盗塁とその足は健在。肩は多少衰えたものの、外野守備範囲はいまだチーム屈指である。プロ通算1449打席で本塁打0。正直、球史に残る非力さ。でも、見方を変えるとこうも言える。背番号31は1本もホームランを打たずにプロの世界で10年近く生き延びている。その小さい身体と守備と足でしぶとくサバイバルし続けているわけだ。

今季1軍出場ゼロの松本哲也 ©文藝春秋

 数年前、テレビ朝日系列で放映された『中居正広のプロ野球魂』という特番で、現役プロ野球選手が監督となり自分が考える理想のメンバーをドラフト形式で指名していく俺のベストナイン企画があった。ここでゲストの阿部慎之助は自チームを編成する際、ことごとく巨人の選手をスルー。さすが元キャプテン、同僚に順位を付けるなんてことはしない大人の対応か……。誰もがそう思いかけた最後の外野手指名で、阿部が選択したのは「松本哲也」だった。

「僕がキャッチャーをやっている時、何度も守備で助けてもらったから」

 みんな忘れちゃいないよ、“育成の星”と呼ばれた男のことを。この夏、東京ドームで再びあのダイビングキャッチを見ることができるだろうか?

 See you baseball freak……

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