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2017/07/15

スー 諸刃の刃ですね。コンプレックスって、自分をはげましたり、言い訳を作ったり、ショックアブソーバー(振動を減らす装置)としての効果もある。たとえば、砂鉄さんの「遅れてきたビーイング」っていう体でやっていくことで個性を作っていくような、コンプレックスによって場所を得ることができる。それは、そこに「欲」が正しくあったからだと思うんですよ。『コンプレックス文化論』ではそれぞれのコンプレックスについて様々な方がインタビューに答えているけど、この人たちはコンプレックスを「欲」に変えられた人達なんだなって思いました。コンプレックスを「バネ」にしてるんじゃないんですよね。

©文藝春秋

武田 この本に出てくださった人たちは、「バネ」というよりは、手持ちの食材でどう食えるものを作るか、って考えて、絵を描き始めたり、俳優を始めたりしたんだと思いますね。

スー インタビューを受けてらっしゃる方たちは、みんな明確な欲望がはっきりある人たちじゃないですか。「私なんかこうだし……」っていうネガティブな話がないのが面白い。「一重瞼だから前に出られない」とかじゃない、むしろ、砂鉄さんがそっちの方向に持っていこうとしても、誰もそっちに乗っていかない(笑)。欲が強いとコンプレックスはいつの間にか自分の足を絡めとるようなネガティブな要素ではなくなるのかもしれないですね。

武田 過去を振り返る形でのコンプレックスなので、好都合に咀嚼している可能性もあります。でも、それは徹底的に自己管理してきたものだからこそ、その好都合ができるって特性もある。他者を巻き込んでるわけではないから。

スー コンプレックスって、基本的に自分を無価値に近づけていくものじゃないですか。自分の価値が他より著しく低いっていう値付けを自分自身にしていくものだと思うので。値付けしたままになっちゃうと、いいことが起こるわけがない。「自分を自分で低く見積もってるんですよ」っていう芸にまでなっていればいいと思うんですけど、ジトッとしたままになっちゃうと厳しいですよね。ある種の腹見せみたいなところもあるし。だから、コンプレックスを持ち続けるには筋肉がいる。

武田 コストがかかりますよね。

スー そう、コンプレックスって、経費かかるんですよ。

(4)に続く


インタビュー構成 武田砂鉄

コンプレックス文化論

武田 砂鉄(著)

文藝春秋
2017年7月14日 発売

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