久々の「大物」がやって来た。
ルーカス・ポドルスキ。
2004年から13年間、ドイツ代表として地元ドイツ、南アフリカ、ブラジルで開催された3度のW杯を含む130試合に出場し、49得点を挙げたストライカーだ。愛称は「ポルディ」。32歳の今年、ドイツ代表こそ引退したが、まだバリバリの現役プレーヤーだ。
ポドルスキが入団したのはJリーグのヴィッセル神戸。来日した7月6日には、スーパースターを一目見ようと神戸空港に約1000人のファン、サポーターが詰め掛けた。ポドルスキはファンが並ぶ沿道で足を止め、関係者が驚くほど長い間、サインや写真撮影に応じたり子供を抱き上げたりと、早速プロフェッショナルぶりを発揮した。
日本のサッカー漫画「キャプテン翼」の大ファンで、すね当てには主人公、大空翼のライバル、日向小次郎のイラストが描かれている。インタビューでそのことを聞かれると「小次郎に電話してヴィッセル神戸に来るように言っておく。僕と小次郎のツートップなら無敵だ」と返答した。ヴィッセルのみならず、日本のサッカーファンに愛されること間違いなしの好キャラクターだ。
欧州や南米リーグで活躍する現役の大物選手がJリーグにやってくるのは、2014年から1年半、セレッソ大阪に在籍した元ウルグアイ代表ディエゴ・フォルラン以来だろう。
英プレミアリーグの名門、マンチェスター・ユナイテッドなどで活躍したフォルランはウルグアイが4位に躍進したW杯南アフリカ大会の時の中心選手だったこともあり、来日の時にはちょっとしたフィーバーを巻き起こした。
だがポドルスキのキャリアはフォルランのそれを上回る。所属クラブは日本代表の大迫勇也が所属するケルン(独ブンデスリーガ)を振り出しに、バイエルン・ミュンヘン(同)、アーセナル(英プレミアリーグ)、インテル・ミラノ(伊セリエA)、ガラタサライ(トルコ・シュペル・リグ)と名門ばかり。2006年のW杯ドイツ大会ではリオネル・メッシやクリスチアーノ・ロナウドを抑えて最優秀若手選手賞に輝き、2014年のW杯ブラジル大会ではドイツの優勝に貢献した。
大物だけに値段は張る。移籍金は260万ユーロ(約3億1000万円)。地元紙の報道によると、2年半の契約で報酬は推定1900万ユーロ(約23億円)に上る。
三木谷浩史の野望
ヴィッセル神戸が大枚をはたいたのは、親会社の楽天、正確に言えば楽天社長の三木谷浩史氏がゴーサインを出したからだ。7月6日の記者会見に同席した三木谷社長は「十分回収できる投資」とポドルスキ入団に自信を見せた。
現在、ヴィッセル神戸はエースストライカーのレアンドロを全治半年の大怪我で欠き、リーグ下位に沈んでいる。圧倒的な実績を持つポドルスキが即戦力になるのは間違いないが、三木谷社長の野望はもっと大きい。
「今日の入団記者会見も、インターネットを介してドイツの人たちが大勢見ているでしょう。欧州リーグで活躍する日本人選手を日本人が応援するのと同じこと。海外のスーパースターを大勢連れて来れば、Jリーグは世界に通用するコンテンツになる。そこはJリーグの村井満チェアマンとも考えが一致している。サッカーや野球で続いている人材流出の流れを逆転させたい」
奇しくも昨年、英メディア企業のパフォーム・グループが運営するスポーツイベント配信サービス「DAZN(ダ・ゾーン)」が、2017年より10年間で約2100億円でJリーグの放映権を獲得した。
「自国の選手が活躍していれば、その国の人たちは必ず応援します。田中将大(元楽天イーグルス、現ニューヨーク・ヤンキース)の試合を日本人は一生懸命観るし、モンゴルでは日本の大相撲がものすごい視聴率を叩き出している。Jリーグも海外のスター選手が集まれば、世界中の人が観るようになる」(三木谷社長)