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若手の「出稼ぎ」が常態化したJリーグ

 日本サッカー界では、三木谷氏が掲げる理想とは逆の「人材流出」が続いている。

 香川真司、原口元気、大迫勇也、酒井高徳、長谷部誠、宇佐美貴史、武藤嘉紀、内田篤人。独ブンデスリーガだけで日本代表(元代表を含む)8人が所属している。本田圭佑、長友佑都(セリエA)、吉田麻也(プレミアリーグ)、川島永嗣(仏リーグ・アン)などドイツ以外の「欧州組」を加えれば、日本代表スタメンの大半は「欧州組」だ。

 Jリーグで芽が出た有望な若手は、すぐに海外に行ってしまい、Jリーグに来る海外選手はほとんどが無名だ。これではJリーグが盛り上がらない。

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 クラブチームのアジア・ナンバーワンを決める「AFCチャンピオンズリーグ」でも、2008年のガンバ大阪を最後にJリーグ勢は優勝から遠ざかっている。金に物を言わせて海外から有力選手を呼び寄せる中国や韓国のクラブチームに歯が立たない。

 ジーコ(ブラジル)、リネカー(イングランド)、リトバルスキー(ドイツ)。ジャパンマネーの全盛期に重なったJリーグ発足前後(1991~93年)には、世界のスーパースターが日本に集結した。彼らに揉まれた日本の若手もメキメキと力を伸ばし、日本代表は1998年にようやくW杯本大会の扉を開けた。

岐路に立つJリーグ ©getty

 あれから四半世紀。バブル崩壊とリーマンショックを経て、Jリーグのスポンサーである日本企業の収益力は低下し、年俸の高い海外の有力選手を連れてこられなくなった。Jリーグのレベルは停滞し、才能ある若手は成長のチャンスを求めて海外リーグを目指した。

 本田、長友、香川など日本人選手の海外での華々しい活躍と裏腹に、若手の「出稼ぎ」が常態化したJリーグは「過疎化」が進み、アジアで勝てなくなってしまった。一方、中国ではJリーグ発足時の日本のように、海外の有力選手に揉まれた若手が力をつけつつある。

 Jリーグの停滞が続けば、やがて日本サッカーは中国などに追い抜かれ、W杯に出場できない暗黒時代に逆戻りしてしまうかもしれない。ヴィッセル神戸のポドルスキ獲得を、人材流出の悪循環を断ち切るきっかけにしたい。そのためには、まずサポーターがポドルスキを観に行くことだ。スタジアムが満員になればクラブが潤い、強い選手を獲得する資金になる。Jリーグデビューは7月下旬。キレキレの元ドイツ代表は、Jリーグのピッチで旋風を巻き起こすことだろう。