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【オリックス】後半戦Aクラス浮上への鍵を握る「カルテット」

文春野球コラム ペナントレース2017

2017/07/18
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カルテットに於ける感動の立役者ヴィオラ、司令塔のチェロ

 合奏で音楽を奏でる場合、すべての編成で言える事だが主旋律の良し悪しだけでそのクオリティが決まる事は無い。伴奏を、リズムを、そして感動を司る楽器パートの活躍があってこそ楽団は成り立つのである。カルテットに於いてはそれがヴィオラ、そしてチェロの役割だ。

 Bs後半戦浮上のキーマンのヴィオリスト。自分は大城滉二選手であると宣言したい。ショートとして入団した彼だが、ここ数試合の安達了一選手との二遊間コンビはそれ程素晴らしいものだった。それにこの大城選手、守備指標「UZR」的にも今シーズンは目覚しい活躍を見せている。過去のコラムでも安達選手の「UZR」値には触れたのだが、今シーズンここまでの安達選手の「UZR」値は「+6.0」、対して大城選手の「UZR」値は「+5.4」と遜色ない数字である。安達選手の体調が完全に良好とはいえない状況が続く中、西野真弘選手、大城選手が熾烈な内野のレギュラー争いを繰り広げてくれれば必然的にBsの野手層は厚くなる。それに俊足の大城選手が塁間狭しとかき乱してくれれば得点力も上がるだろう。後半戦はカルテットに於ける縁の下の力持ちを大城選手が担ってくれる事を期待している。

 そして最後にカルテットの司令塔チェリスト。それは勿論、若月健矢選手である。ここまで正捕手として62試合に出場した若月選手。若手投手を中心に女房役として投手の勝利に大きく貢献してきた。途中打撃に苦しんだ期間もあったが若き捕手に多くを望みすぎるのも酷なもの。それだけ守備に関する負担が大きかったのだろう。また、前半戦の終盤では見事な打撃を披露し好調をアピールしてくれたので、この調子を後半戦も維持して欲しい所だ。フレーミング技術も著しく向上し、何より山崎投手の初完封を演出するなど、捕手としてチームからの信頼も日に日に増している若月選手。まだまだ若き司令塔である彼。今シーズン後半戦と言わず、この先数年の成長が楽しみな選手である。

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 余談ではあるがチェロを題材にした有名な童話に「セロ弾きのゴーシュ」という宮沢賢治の作品がある。楽団で他メンバーの演奏について行けず楽長に叱られてばかりのゴーシュであったが、様々な動物との出会いからチェロの演奏技術を向上させていく。エンディングでは成長したゴーシュを楽長がアンコール演奏に送り出すという感動の物語であるが、どうにも楽長を福良淳一監督、三毛猫を鈴木郁洋コーチと重ねてしまう自分がいる。気になった方は一度読まれてみてはいかがだろうか。

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※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/3373でHITボタンを押してください。

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