その経緯を別のペッパーフードサービス関係者が説明する。
別のアルバイトの銀行口座を迂回して給与支払い
「就労が認められていないということは、Xさん本人もオーナーのAさんももちろんわかっていました。その上で、年末年始の人手不足を乗り切るために、オーナーのAさんがXさんに『働いてほしい』と打診したのです。オーナーはXさんの働いた分の給料を、同じ店のアルバイト・B子さんが働いたことにして、いったんB子さんの銀行口座に振り込まれた給料の中から、Xさんの分を取り出し、現金で手渡ししていた。オーナーは不法就労のスキームにB子さんも巻き込んだのです」
Xさんは自分の勤怠状況をメモに書いて店長に渡していたという。取材班が入手した4枚のメモを見ると、Xさんは2020年1月だけでも100時間を超えるペースで働いている。
だが、1月27日になって本部のスーパーバイザーがこの事態を把握した。その後、スーパーバイザーがXさんに事実確認をすると、以降、Xさんは店に来なくなったという。
取材班は2月11日、Xさんに声をかけたが、「手伝っていただけ。お金はもらっていない」と流暢な日本語で答え、足早に去っていった。
オーナーは「人材確保は大変。焼き手はすぐに育たない」
翌12日、オーナーのA氏を直撃すると、おおむね事実を認め、こう話した。
「自分がやったこととして事実を受け止めて、処分を甘んじて受け入れます。人材の確保は本当に大変なんです。年末年始にかけて、(10月で辞めていた)Xさんの穴を埋めようとしましたが、(新人を雇ったとしても)そんなすぐには焼き手が育たないし、一から教えないといけないということもあり、教育コストもかなりかかるんです。もちろん人手不足ということがなければ、Xさんに声をかけることはなかった。
だからと言って、他の直営店とかに人員のヘルプを投げかけることができる環境も今は整っていません。以前は会議が終わってから(他の店長と)一緒に飲みに行ったりとかして情報交換をしていたのですが、2019年に入ってから、会社の経営悪化が進んでしまい、どの店舗も余裕がなくなってしまい、自分の店で手一杯という状況なんです」