「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」
不法就労の外国人は年々増えているという。だが、雇用者側にも労働者側にも厳しい罰則規定がある。不法就労問題に詳しい広尾パーク法律事務所の尾家康介弁護士が話す。
「今回のようなケースでは、雇用主は『出入国管理及び難民認定法』第73条の2第1項1号の『不法就労助長罪』に抵触する恐れがあり、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科せられる可能性があります。不法就労していた外国人は、最も重い場合で、同法第70条1項4号に則り、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科せられる可能性があります。刑事罰と退去強制の関係は複雑なので、一概には言えないですが、基本的に不法就労が発覚した場合は刑事罰に問われてから退去強制という流れが多いです」
「偽装難民」は飲食業界で特に頻発
外国人の法務サービスに特化したコンサルティング会社ACROSEEDの代表で行政書士の佐野誠氏が、近年の不法就労の実態を解説する。
「この2、3年で不法就労が発覚して、自国に強制退去されている人数だけでも、毎年約1万人ほどいます。まさに今回のようなケースがポピュラーな手口なのです。つまり、学生ビザが失効した後に、難民認定申請をしながら日本に在留し、不法就労に及ぶのです。このような外国人は『偽造難民』と呼ばれています。日本の難民認定審査は極めて厳しく、難民申請はほとんど通りませんが、その結果が出るまでの1年から1年半ほどの間、とりあえず日本に在留することができる。
偽装難民を含めた不法就労の問題は、飲食業界で特に頻発しています。日本の飲食業界は、外国人労働者なしでは成り立ちません。数年前までは中国人労働者が出稼ぎのために日本に進出していたのですが、中国の経済発展と『留学生30万人計画』によりここ数年でベトナム人留学生が増えています。
この偽造難民の影響で、本来保護されるはずの本当の難民が不利益を被っています。入管局としても難民と偽造難民の区別は難しい。2019年の日本における難民認定者は20人と諸外国と比べてもケタ違いに少ないのですが、偽装難民の存在が難民認定の門をより狭くするのです」