小学生の頃、まだ若い烏と仲良くなった。その子が電線で感電死して、ずっと心に棘が刺さってる
■八咫烏をメインに書こうと思われたきっかけは何ですか?(10代・女性)
阿部 インタビューで話したように、友達に八咫烏が面白いと言われたこともあるんですけれど、もともと私の家の近くに烏がいっぱいいるんですね。それで、小学生の頃、ちょっと烏と仲良くなったことがあるんです。いつも近くに行っても逃げない子がいたんです。まだ若くて口の中がピンク色で目が灰色で。向こうもキョトンとして私を見ているし、私も挨拶をしていました。でも悲しいことにその子が電線で感電しちゃって死んじゃったんですよ。それがずっと、心にとげが刺さったみたいになっています。だから他の人たちよりも烏に対して垣根が低いというか、好感度が高かったんです。
それに、自分の観てきた鳥の中で、烏は1、2位を争うくらい美しいと思っています。つがいの烏が日差しが強い夏の日にネムの花が満開の木の中で寄り添って涼んでいるのを観たことがあったんです。それが大変美しくて、胸に焼き付いていて。そういったこともあって、烏を主人公にしようと思ったのはあるかもしれません。
■1作目の絵に惹かれて、大学時代に読んですごく感動して以来ずっと続きを楽しみにしていました! 新作がでるのもすごく楽しみでしたし「オール讀物」に掲載された外伝「すみのさくら」もすぐに読みました! 未来の夫婦の在りし過去がほんとに素敵すぎて、最後ウルッときてしまいました! そして、その号に掲載された夢枕獏先生との対談のなかの、「『烏に単は似合わない』が平安時代では絶対ありえないような」設定とは何だったのか教えて頂けたら嬉しいです! (20代・女性)
阿部 実際の平安時代の世の中だったら、お姫様が一堂に会して、若宮の后を選ぶという状況がありえないかなと思います。
■私も日本の歴史を背景にした妖怪と人間が混じって住む小説を執筆しているのですが、今後八咫烏シリーズの中で、八咫烏や猿の他に出そうと思っている妖怪や、伝説上の生き物などはありますか?(10代・女性)
阿部 場合によっては出すかもしれませんが、今のところ予定していません。
読者それぞれの胸の中にある映像は、とても尊いもの
■物語や世界観の発想は、いつどんなところから出て来るのでしょうか?(40代・女性)
阿部 いつでもどんなところでも、という感じです。ただ、何もないところからは何も生まれないので、畑を耕すという意味で、興味のあるものに対してなるべく広く視野を持つようにしています。
■阿部さんの作品のメディアミックスが進む日も来るのでしょうか?(50代・女性)
阿部 メディアミックスはやりたいです! でも公式と銘打つ映像やヴィジュアルに関しては、できる限り私が介在して、私の中のイメージを忠実に再現していただけるようにしたいなと思っています。コミカライズのお話もいろいろ来ているんですが、私がこの方と思える方がいない限りOKを出すつもりはないです。私がこの作品の一番のファンでもあるので、名前に恥じるようなことはしないようにしたいです。アニメ化も同様です。
ただ、そうしてヴィジュアル化された時、読者それぞれが文章を読んで思い描いた世界とは違うと思うんです。でも、自分の中の絵が公式の絵と違うからといって、間違っていたとか思う必要はまったくない、とは言いたいです。それぞれの胸の中にある映像というものは、とても尊いものです。
阿部智里(あべ・ちさと)
1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学文化構想学部在学中、史上最年少の二十歳で松本清張賞を受賞。デビュー作『烏の単は似合わない』以来『烏は主を選ばない』『黄金の烏』『空棺の烏』『玉依姫』を毎年一冊ずつ刊行し、「八咫烏シリーズ」は累計85万部を越える。シリーズ外伝を「オール讀物」で発表中。現在、早稲田大学大学院文学研究科で学びながら執筆活動を行っている。
八咫烏シリーズ特設サイト
http://books.bunshun.jp/sp/karasu
八咫烏シリーズ公式twitter
https://twitter.com/yatagarasu_abc
「弥栄の烏」最新動画
https://www.youtube.com/watch?v=rBc77NeYqJE