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それでも巨人に38歳阿部より打てる若手はいない

 悲しいけど守備や走塁面も含め「捕手阿部」なら我慢できていたことが、「一塁手阿部」では色々突っ込みたくなるこの感じ。アイドルグループのセンターを務めていたときは輝いていたのに、卒業して女優業にシフトした途端に力不足を露呈する元AKBメンバーみたいな諸行無常。チーム打率.244、ヤクルトと並んでリーグ最低の62本塁打という貧打巨人への怒りをぶつけそうにもなるが、ふと冷静になるとこうも思う。今の巨人で阿部と同じく「11本塁打を打てる若手野手」がいるだろうか? と。そりゃあ、可能ならば広島のベテラン新井さんのような代打中心で随時スタメン起用がベスト。けど、巨人の場合は38歳の満身創痍の阿部と比較しても、それを超える若手がどこにもいない現実がそこにある。

 だから、俺がやるしかない。そういう意味でも、阿部は今も巨人を背負っているのである。この10数年、強いときも、弱いときも、いつも変わらず背番号10がそこにいた。最近、東京ドーム試合前に2000安打カウントダウンの特別映像がオーロラビジョンに流れる。その中でともに戦った原前監督は柔らかい笑みを浮かべながらこう言うのだ。

「(慎之助は)そんなに背負わなくてもいいよ。まだまだそんなに自分を追い込む必要はないよと。ジレンマの中で苦しんでいるんだろうなあという。私の最後の年(15年)はもうキャッチャーというポジションは無理であると。肩、そして首ですかね。非常に苦しんでいた時期がありました。それでも試合に出るとね、そういう姿を見せないところが彼の良さですよ」

 2000安打まで、残り15本。生え抜き選手としては柴田勲以来37年ぶりの快挙は、大きな故障さえしなければ8月中には達成濃厚だろう。その祭りのあとで、日常が始まる。恐らく、記録達成後はこれまで以上にシビアな阿部起用法が論じられるはずだ。すでに捕手ではなくなり、いずれ4番打者でも不動のレギュラーでもなくなる。その瞬間、阿部慎之助は晩年の由伸のように「代打の切り札」という役割を受け入れるのか? それとも……。

2000安打まで残り15本に迫っている阿部慎之助 ©文藝春秋

 昨年春に宮崎キャンプでインタビューした時、自身のキャリアについて聞くと、穏やかな表情で21世紀の巨人を背負い続けた男はこう言った。

「かっこよく辞められたらいいんだろうけど、一度きりの人生だし、好きな野球を1年でも長くやれればいいんだろうな、と思うよね。今は」

 See you baseball freak……

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