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大量リードの終盤での盗塁

 話はプロ野球に戻りまして、ある試合でこんなシーンがありました。終盤、点差やイニングは失念してしまいましたが、大量リードしているチームの選手が1塁から盗塁を試みましたがファウル。直後、1塁ベースコーチがその選手に耳打ちし、その後は走りませんでした。そして、二死でフルカウントになった時、今度はその選手が1塁コーチに確認していました。

 試合後、その1塁ベースコーチを取材したところ、最初は「点差が開いているから盗塁はダメ」とコーチから選手に。2度目は「今度はスタート切っていいんですか?」と選手からコーチに。これは、当然走るところです。じつはこの選手、甲子園で何度も優勝を果たしている超名門校出身です。そのチームは甲子園の試合でも、大量リードの終盤にどんどん走らせています。正解はありませんが、周囲の関係者やファンの捉え方次第でしょうか。

 プロ野球観戦でもいろいろな見方があります。やはり、ひいきのチームの勝利が第一でしょう。また好きな選手の活躍もワクワクします。その中で、この暗黙のルール(紳士協定)も頭の片隅に入れての観戦も面白さが広がるのではないでしょうか。

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 前に書きましたが秋山幸二(前ソフトバンク監督)の日本シリーズでのバック宙ホームイン。考案者の一人として若干胸に刺さっているのが、試合中に披露してしまったこと。秋山本人との申し合わせ事項では「サヨナラホームランの時に限る」でしたが、喜びのあまりのバック宙でした。あれから30年あまり。今の流れでは非難を浴びるパフォーマンスだったかも知れません。また、この後報復行為に至らなかった広島ベンチの心の広さに感謝です。

1986年の日本シリーズ第8戦で同点ホームランを放ち、バック宙を披露した秋山幸二 ©文藝春秋

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