きょうは女優の天海祐希の誕生日である。いや、宝塚歌劇団に所属していたころから、演技の基本を「自分たちの演じる対象は男か女かという前に人間である」ということに置いてきた彼女を、「女優」と呼ぶのはいささかためらいがある。

「2008ユーキャン新語・流行語大賞」で「アラフォー」が年間大賞に選ばれた女優の天海祐希さん(左)と特別賞の上野由岐子選手 ©共同通信社

 宝塚では1987(昭和62)年3月に初舞台を踏み、同年、月組に配属後、11月の新人公演『ミー&マイガール』では主役に抜擢された。入団1年目での主演は宝塚史上初であった。93(平成5)年の『花扇抄―花姿恋錦絵―』で男役トップスターとなった天海だが、先述のモットーゆえ、男役はこうでなければならないと決めつけられることにはずっと違和感を抱いてきたという。それゆえ彼女は、自分の存在は宝塚では異端であると自認していた。そのためか、95年の宝塚退団後、舞台『パンドラの鐘』(99年)に出演したときには、作・演出の野田秀樹から「なぜ、そんなに宝塚の癖がついてないの?」と驚かれたとか(天海祐希『明日吹く風のために もっと遠くへ』講談社+α文庫)。

 しかし野田はまた、天海に「宝塚に感謝しなければいけない」とも助言した。その理由は彼女が「正面切って客席と向かい合い、セリフが言え、芝居ができるから」だ。たしかに映画やテレビドラマでも、独立独歩の人物を演じることの多い彼女は、正面切って演技ができるからこそ、その役をより生かせるのだともいえる。

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 初舞台から30年が経った現在も舞台、映画、テレビと活躍を続けているのは周知のとおり。今年4月~6月に放送された主演ドラマ『緊急取調室』第2シーズン(テレビ朝日系)は、平均視聴率14.1%で、同クールの民放連続ドラマのトップとなった。今月6日までは1ヵ月間、三谷幸喜作・演出の舞台『子供の事情』で、ほかの全出演者とともに10歳の小学4年生に扮した。かつて映画『千年の恋 ひかる源氏物語』(01年)では男性である光源氏を演じた彼女だが、50歳になる直前に、年齢を超えた役に挑み、なおも存在感を増しつつある。