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わいせつ動画のスクショ流出 マクロン大統領の側近はなぜ“致命傷”を負ったのか?

2020/02/24
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不倫に鷹揚なフランスであっても

 この事件について、政界では会派を問わず、グリボー氏を責める声はあまりない。もっぱら「プライバシーの尊重」の大合唱で、政治家としての資質と私生活は区別されるべきという態度だ。もっとも、脛に疵持つ人も多いということでもあろう。

 フランスでは不倫には鷹揚である。芸能人などではゴシップ誌のニュースにはなっても全く影響はない。性的な動画が流出しても被害者だと同情される。だが、政治家は別で致命傷になることもある。大統領や大物政治家が揉み消しに躍起になったことも一度や二度ではない。「パリジャン」は、「シラクがiPhone X の時代にいたらどうなっていたことか?」という共和国前進の党員の声を伝えているが、確かにその通りである。

 グリボー氏は、13日にマクロン大統領と直接電話会談をし、出馬辞退を即決した。マクロン大統領は「黄色いベスト」運動が下火になったと思ったら、年金改革で激しい抵抗を受けている。「パリジャン」は、「(映像は)私です。もうすぐ裁判でも勝ちます。それ以外は、プライバシーと突っぱねればよかったのに」という大統領府の消息筋の声も伝えているが、ダラダラと先延ばしにすることはできなかったのだろう。

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©iStock.com

パリ市長選は3人の女性の戦いに

 もっともグリボー氏の旗色も良くなかった。世論調査で15%の支持しかなく、決選投票に残れそうもなかった。「黄色いベスト」運動の時には、写真を踏みつけられたりもした。暴言を吐いた私的な会話がマスコミに流れたこともあった。パリ市長選の候補者選びは最後まで揉め、ライバルであったセドリック・ヴィラニ氏は離党して出馬すると表明するに至った。

新候補のアニエス・ビュザン氏 ©︎AFP/AFLO

 2月17日には、新候補としてアニエス・ビュザン保健相(57)が決まり、すぐに大臣の交代を行ったことで、現場の共和国前進陣営はむしろ安堵しているようだ。パリ市長選は現職のイダルゴ氏、第2位につけている共和党のダティ氏、ビュザン氏という3人の女性の戦いになった。

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