もし欧米が最初に新型コロナの影響を受けていたら……
――現在、日米など連鎖的な世界の株安は止まらず、リーマン・ショックや米同時多発テロの下げ幅を超えています。やはりその原因は新型コロナウイルスによるものでしょうか。
飯田 世界的・連鎖的な株安は2月20日以降です(日本では2月13日から株価が不安定ですが、海外はたいして下げていませんでした)。これまで中国の、せいぜい日中韓の問題と目されていた問題がヨーロッパへ波及したことで、世界的な問題として深刻化しつつあるとおもわれます。
――最初に影響を受けたのが中国であったことは今回の世界的な株安において、重要なポイントでしょうか。
飯田 中国発か否かはそれほど重要ではありません。想像の域を出ませんが、同様の問題の発生源が欧州・米国であったならより大きな問題となっていたでしょう。
――中国国内に工場を持つトヨタ自動車やUNIQLOなど、日本企業のサプライチェーンへの影響も心配されています。深刻化するのはまだ先でしょうか。
飯田 サプライチェーンへの影響は軽視できるものではありませんが、あくまで流行が沈静化していくならば、第一義的な問題ではないでしょう。世界の多くのメーカーは工程の分散化や複線化を進めています。最大の生産・供給能力をもつ中国での生産が止まった影響はあるものの、中国の他地域・他の国の生産拠点の稼働率を上げるといった対応が行われるでしょう。また中国国内でも工場操業の再開が検討され始めています。
問題は日本はもちろん、東南アジア、欧米で同様の感染拡大が生じ、その対応として都市封鎖や移動制限を行う国が増えることです。こうなった場合の影響は予想できません。
一番影響を受けるのは……
――日本国内ではここにきて、コンサートやイベントの中止が相次いでいます。消費性向の低下も予想されますが、特に影響を受ける業種はどこでしょうか。
飯田 イベント産業は宿泊・飲食・交通費等との連動性が高く、これらの関連する消費を含めると年17兆円(2018年、日本イベント産業振興協会調べ)にのぼります。流行期間中8割のイベントが中止に追いやられるとすると、月毎に1兆円ほどの消費の低下が生じると考えられます。
イベント業界そのもの(年間市場規模2.2兆円、同協会調べ)以上に宿泊・飲食等の地場の中小零細事業への影響が大きいと予想されます。
日本国内・世界経済ともに問題は供給側(サプライチェーン云々)よりも需要側にあります。観光業への影響は感染拡大が収まっても中長期的に世界の人の流れに大きな影響をもたらすでしょう。
日本国内の旅行消費額は日本人21.9兆円、外国人(インバウンド)4.8兆円規模(2019年暦年、観光庁調べ)となっており、その長期的な停滞は国内経済に深刻な影響を及ぼすと考えられます。