「(3980円以上、送料無料を実施すると)ハッピーでない人がいるかもしれないが、これをやらないとみんなが沈んでしまう。5万店の店舗を載せた楽天という船が、激化する一方の荒波を乗り切るにはこれしかない、という思いでやっている」

 楽天会長兼社長の三木谷浩史が吠えた。

送料無料化の理由を説明する楽天の三木谷浩史会長兼社長 ©大西康之

 同社のネットショッピング・モール「楽天市場」が打ち出した「3980円以上お買い上げで、一律送料無料」の施策に対し、公正取引委員会は2月10日、「独禁法で禁じている優越的地位の乱用に当たる恐れがある」として立入検査に入った。中小の店舗に送料を負担させ、経営を圧迫しているのではないか、という疑いだ。

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楽天では店舗が個々に送料を決めている

 2月13日の楽天の決算発表記者会見。メディアは楽天の業績より、「送料無料」に関する三木谷の発言に注目した。結論を先に言えば、三木谷は冒頭の発言の通り、持論を通した。

 楽天の理屈はこうである。

 最大のライバルであるアマゾン・ドット・コムは原則「お買い上げ2000円以上で送料無料」としており、年会費4900円を払ってプライム会員になれば、対象商品は全て送料無料になる。

 これに対し、現在の楽天は出店している店舗が個々に送料を決めている。商品の販売価格を高めにして送料無料にしている店もあれば、商品を安く送料を高く設定している店もある。利用者は商品の価格と送料を注意深く見ないと、どれが一番安いのか分からない。

「楽天が儲けようという話ではない」

 この「分かりにくさ」が「楽天よりアマゾンの方が安い」という利用者のイメージに繋がっている、と楽天は分析した。そこで1年ほど前から、一定金額以上は送料無料とし、価格表示をアマゾン並みに分かりやすくする方針を打ち出し、店舗と話し合いを続けてきた。その結果として出てきたのが、3月18日から実施する「3980円以上で送料無料」の方針だ。

シリコンバレーにも進出している楽天 ©iStock.com

 しかし「無料」と言っても、実際には利用者のところまで商品を届ける運賃がかかるわけで、そこは店舗の負担になる。

 これに対し「楽天ユニオン」を名乗る人々が「店舗いじめだ」と反発。1700筆超の署名を集めて公取に駆け込んだ。弱者の味方、公取が悪代官の楽天を成敗する、という構図が生まれた。

 三木谷はこう反論した。

「これ(送料無料化)は、楽天が儲けようという話ではない。やらなければ(楽天市場の成長が止まり)みんなで沈むことになる」