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告発者を会議室で“恫喝” 患者を食い物にする「がん免疫療法クリニック」 の許されざる実態

告発者を会議室で“恫喝” 患者を食い物にする「がん免疫療法クリニック」 の許されざる実態

エビデンスのない“治療”で高額をむしり取る

2020/03/05
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6人の男が教授を取り囲み……

 東京駅を見下ろす高層オフィスビル・京橋エドグラン。その24階に構える「石井クリニック」に、勝俣教授は呼び出された。2018年11月4日のことである。

 入館ゲートで待っていると、黒く焼けた肌に格闘家のようなガッチリした体型の男が現れた。真っ赤なスウェードの靴が目立つ。

 細い目で、我々を睨みつけて言い放った。

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「勝俣教授だけだ、中に入れるのは!」

 それなら2人とも帰ると伝えると、しぶしぶ私の同行を認めた。

石井クリニックにて

 通された会議室には、5人の男たちが待ち構えていた。入り口を塞ぐように石井院長が腰を下ろすと、勝俣教授は周りを囲まれる格好だ。

 石井医師が詰めよる。「偽計業務妨害だ。偽の情報を流して営業妨害するということ。それを勝俣先生がやっている。どう考えていますか?」

「免疫細胞療法は効果が不明確である、ということは正しいと思っています」と勝俣教授が返す。

大声をあげて謝罪を要求

 事の発端は、この10日前に勝俣教授がツイッターで発信した内容だった。

 勝俣教授は、講演で訪れた東京・三鷹のビルで、保険診療のクリニックがANK療法を行なっていると知り、「やめてほしい」とツイートした。

石井クリニック関係者ら

 また、「AERA」(同年10月15日号)が、本庶佑氏のノーベル賞受賞を報じた記事で、石井クリニック関係者が解説していたことをツイートで批判した。本庶氏の研究とANK療法は、真逆の存在であり、それすら知らない担当記者は不見識だと指摘したのだ。この2つのツイートで名誉を毀損されたとして、石井院長らは勝俣教授をクリニックに呼びつけたのである。

 会議室では、6人の男たちが勝俣教授を取り囲み、大声をあげて執拗に謝罪を要求。まるで恫喝である。そして用意してきた謝罪文を取り出して、サインするように迫った。石井院長は自分と対談を行い、ANK療法の宣伝に協力することまで求めてきたが、勝俣教授はこれらをすべて毅然とはねつけた。