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作品の前に立ち止まる長い長い時間
さらには画面の構成も、全体は遠近法を用いて奥行きが表現してあるものの、各部分は切り貼りしたようにつながれていて、視線をさ迷わせるだけで三次元と二次元を行き来できるかのよう。細密な模様の効果もあってか、頭がクラクラとする。
一枚の絵画の枠内で、視線と思考が自在にふるまうのを止められなくなる。宝物がそこかしこに隠れている広い原っぱを、思う存分駆け回っている気分だ。ここでなら一日中遊んでいられると感じさせる場が、ギャラリー内に出現している。
それで観者は、個展タイトルの通りいくら見ても見切れないという思いに捉われて、知らず長い長い時間を作品の前で過ごすこととなる。ずっと目を留めていられる絵画を目論む水野里奈の術中に、みごと嵌まってしまっているのだ。
メイン作品たるこの《入れ子状の建物》だけでなく、会場にはもうすこし小ぶりの作品も多数並ぶ。水野作品の世界にどっぷりと浸かってみたい。