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「売れている理由が私にも分からないんです。ただ、これは推測ですが……今年は卒業式や終業式などの式典が突然中止になったので、小さな花束を贈るよりも、何か形に残るものを友達に贈りたいという意識が強まったのかもしれません」

 話を伺ったのは、店長の立川まりさん。フローラルライフは3月になると卒業式シーズンということもあって、例年ならば花束の注文が殺到する。しかし、今年は式が中止になって注文が激減。その売上を補っているのが、このプチバルーンバンチだった。

「学校が突然休校になり、友達にお別れもしっかり言えなかったこともあって、後からネットでプチギフト品を探している人が多いのかもしれません。うちのネットショップは通常は花と雑貨のギフト品がだいたい5:5で売れるのですが、2月後半からは8割の注文を雑貨のギフト品が占めています」

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 心の準備ができてない中でのお別れということもあって、その穴埋めとしてネット通販が利用されているのかもしれない。

「花粉症なんです」スタンプとは?

 次に紹介するのはマスク用のスタンプである。製造、販売しているのは千葉県在住のアフィリエイター・和田亜希子さん。

「花粉症なので春になるといつもマスクをしているんです。そしたら周りの人から『風邪ですか?』と声をかけられることが多くて。マスクに花粉症のハンコを押せば、心配されることがなくなると思って、それでマスク用のハンコを作ろうと思ったんです」

 マスクに「花粉症」というハンコを押す構想は、昨年の秋ごろからあったという。そこに新型コロナウイルスの騒動が起きて、急きょ、都内のクリエイターの工房で講習を受けて、レーザーカッターを使ってハンコを自作することにした。

 ハンコは「花粉症」「花粉症です」「花粉症なんです」の他に「喘息なんです」というパターンも。長方形や丸型もあって、大は700円、小は300円。急いで作ったネットショップ『花粉症さんの味方』(https://beergarden.shop-pro.jp/)で販売している。

「花粉症なんです」スタンプ

「ハンコを押したマスク姿の写真をTwitterにアップしたところ、1日で8500件リツイートされて、いいねボタンは1.4万回も押されました。試作分も含めれば、これまで100個ほど売れています。まだまだ注文が入りそうなんですが、製造も販売も1人でやっているので、今後、どうやって製造していこうか思案中です」

 私も花粉症なので、試しに自分のマスクに「花粉症なんです」というハンコを押して使ってみた。新型コロナウイルスが発生してからというもの、鼻がむずむずしても、感染者だと疑われたくないので、むやみに顔を覆うことができなかった。しかし、マスクに「花粉症なんです」とハンコを押していると、心なしか周囲の視線も和らいでいるようにも感じられる。

「たくさん売れるとも思っていないし、独創的なアイデアでもないので、真似されたら真似されたでそれまでかなと思っています。今は暗いニュースが多いですから、このハンコで少しでも周囲が明るくなれば、それでもう十分だと思っています」

 新型コロナウイルスの影響で、ネットで「意外に売れているもの」を調べたところ、爆発的に売れているような商品を見つけることはできなかった。景気の先行きが不透明なこともあって、財布の紐を締めていることが、実店舗と同じような商品しかネットで売れていないという状況になっているのかもしれない。

 ただ、最後に紹介した雑貨のギフト品やマスクに押すハンコは、人と人との関係性を少しでも「繋ぎたい」という思いから売れている商品に思える。イベントの自粛や自宅待機が続く中、人恋しくなっている消費者が、ネットの買い物を通じてかすかなコミュニケーションをとろうとしているのかもしれない。