「今でも、家に帰ったら父がいるんじゃないか、何かボヤくんじゃないかって思うんです。本当に突然でしたし、心の準備もできていなかった。僕の中では、父であるより先に『野村克也』という偉大な野球人。そんな方が亡くなるはずがないって気がして仕方ないんですよ」

 月刊「文藝春秋」のインタビューに、そう明かすのは、プロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスの野村克則1軍作戦コーチ(46)。克則コーチの父で、ヤクルトスワローズ、阪神タイガース、楽天イーグルスなどの監督を歴任した野村克也さんが2月11日午前、虚血性心不全で亡くなった。

 最愛の妻・沙知代さんが2017年12月に同じ虚血性心不全で亡くなってから、2年2カ月後のことだった。

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「派手な喧嘩をすることも」 ©共同通信社

「沙知代は世界に一人しかいません」

 球界随一の“おしどり夫婦”として知られる克也さんと沙知代さん。3歳年上の妻は球場に駆けつけては夫を鼓舞し、メディアにもたびたび揃って登場してきた。

「父自身が言っていましたけど、ウチのお袋に合わせてやっていける夫は、世界中に父しかいなかったと思います。選手兼監督だった南海をクビになる時、後援会長から『野球を取るか女を取るか』と迫られ、『仕事は世の中にたくさんあるけど、沙知代は世界に一人しかいません』と答えたセリフが有名ですよね。難しい選択だったと思いますけれど、間違いではなかったんでしょう」