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《新たな抗争の予兆か》山口組弘道会傘下で大量の「破門状」「除籍状」が出されていた

2020/03/21

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, 社会

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秘密組織「十仁会」とは?

 警察当局は長年にわたり弘道会を相手に手を焼いてきた。大きな要因として、警察庁幹部は、「弘道会内の秘密組織とも言える十仁会だ」と指摘する。

「活動内容や人員など、不明な点が多く実態はあまり分かっていない。住吉会や稲川会など、他の暴力団組織に対する調査活動をするだけでなく、警察、特に愛知県警の暴力団犯罪の捜査員についてはかなり調べられていた」(同前)

 警察の組織編成や捜査員の配置、役割分担といったことだけにとどまらず、個別の捜査員の業績評価や経歴、プライベートな趣味などの個人情報、さらには捜査員の家族構成までもが十仁会の調査対象だったという。

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 警察庁幹部がかつての「気味の悪い話」としてエピソードのひとつを明かす。

「ある時、愛知県警が弘道会系の傘下組織のガサ入れ(家宅捜索)に向かったところ、事務所の玄関にガサの現場指揮官の家族がそろってにっこりと笑っている写真が貼りつけてあったと聞いた。これは『家族についても把握しているぞ』という脅しだ。もちろん、この指揮官は写真をはがして、何事もなかったかのように部下を率いてガサに入ったそうだ」(同前)

警察と山口組、神戸山口組との腹の探り合いは続く(写真はイメージ) ©iStock.com

 家宅捜索がいつ行われるか、捜索の現場指揮官は誰なのか、愛知県警の内部の情報が筒抜けになっていたのだ。

 十仁会は高山が恐喝事件で京都府警に逮捕され、有罪判決が確定して刑務所に収監された時点で解散したとの情報もあるが、現在も弘道会の秘密組織として存続している可能性もあり警察当局でも活動実態はつかみ切れていない。

 そのうえで、先ほどの組織犯罪対策部幹部は次のように指摘する。

「これまでの動きを見ていると、弘道会が偽装破門の処分者たちを集めて対立抗争事件の実行グループを編成するようなことがあるとは思えない。しかし、昨年10月に高山が出所して以降、山口組の動きは変化してきている。十仁会のような調査、襲撃グループが結成され抗争事件を引き起こす可能性も否定できない。何事にも予断を許さず対処していかねばならない」

 特定抗争指定後、大きな対立抗争事件の発生はなく山口組、神戸山口組の双方は抑え込まれた形となっているが、警察と山口組、神戸山口組の間の腹の探り合いは今後も続いていく。(敬称略)

《新たな抗争の予兆か》山口組弘道会傘下で大量の「破門状」「除籍状」が出されていた

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