2019年度の公立小学校教員採用試験の倍率は、全国平均で2.8倍と過去最低に。教育現場では教員の質を担保できるボーダーラインは3倍と言われてきたが、1倍台の自治体も複数あった。これまで病休などで開いた穴を埋めてきた非正規教員も枯渇しており、教員の未配置により授業が行えない事例も各地で出てきている。
教員がブラック労働化するほど、教員のなり手が減り、今いる教員も病んでいき、人手不足でさらにブラック化し……という悪循環に陥っているのが、現在の公教育の実情なのだ。
このままでは学校から先生がいなくなる!?
近年は文科省や自治体により、教員の事務作業を補助する「スクール・サポート・スタッフ」が配置される学校も増えてきた。だが、前出の松原さんは「日々圧倒的に時間を取られるのは学習指導なので、事務作業をちょっと軽減してもらっても意味がない」と指摘する。
「それよりも1クラスの人数を減らすために、先生の数を増やしてくれる方がいいです」
教員の増員こそ悪循環を断ち切る解決策、というのは教育現場の多数を占める声だ。しかし解決策が見えていても、政治が動かなければ、実現することはできない。
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「文藝春秋」4月号および「文藝春秋 電子版」に掲載の「ルポ『学校荒廃』――先生がいなくなる日」では現役教員や病に倒れた元非正規教員、教員養成大学などの証言から教員をとりまく現状をあぶりだす一方で、悪循環を断とうとする校長や識者の奮闘を紹介する。
これまで教育関係者でもなければ「先生がいなくなる日」を恐れることはなかったかもしれない。しかしこの状況を放置し、教員のなり手がいなくなれば、公教育は崩壊する。子どもたちの教育を受ける権利を保障できなくなるだけでなく、国力の低下や、絶望的な格差社会にもつながる。これは教員だけの問題ではない。この国の未来に関わる話なのだ。
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ルポ「学校荒廃」──先生がいなくなる日