昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/04/06

その3)男性主人公は「マッサン」玉山鉄二から6年ぶり

 朝ドラは基本、主婦層をターゲットに置いたドラマなので、女性が主人公であることが多いが、時々、男性主人公のものもある。今回は、玉山鉄二が主演した2014年の「マッサン」に続き、窪田正孝が主人公を演じる。男性が主人公だと主たる視聴者の共感を獲得しにくいというデメリットもあるのだが、主人公の夫や恋人役の男性の魅力が朝ドラの求心力でもあり、とりわけ近年はイケメンが視聴のモチベーションになることも多いので、あえて男性を主人公にするのも戦略としてはいいかと思う。

その4)「朝市さん?!」主人公となって戻ってきた窪田正孝

 主人公はフレッシュな新人が多かったが最近はある程度、実力と認知度のある俳優の起用も増えてきた。合わせて、過去に朝ドラで脇をつとめ、好感度の高かった俳優が主人公となって戻ってきたという、出世魚を見るのも楽しめるポイントだ。主人公を演じる窪田正孝は2010年「ゲゲゲの女房」、2014年「花子とアン」に出演して、脇役ながら人気だった。とりわけ「花子とアン」では、朝市という、朝ドラのあとに放送されている「あさイチ」と同じ名前をもらって、彼が主人公のスピンオフまで制作されている。朝市はヒロイン(吉高由里子)への想いが実らない切ないキャラだったが、「エール」では、二階堂ふみ演じる妻・音と、幼少期から運命の出会いをして添い遂げる。そんな夫婦の二人三脚も必見だ。

主人公・古山裕一を演じる窪田正孝(右)と、その妻・音を演じる二階堂ふみ(左) ©AFLO

その5)朝ドラに欠かせない「ナレーション」

 朝ドラは、当初、朝の支度が忙しい主婦が作業しながらでも内容がわかることに留意されて作られた。そのため、丁寧に状況や心情を説明するナレーションが重視される。「連続テレビ小説」なので「小説」の風情ある文学的な表現を、名優やアナウンサーが美しい発声で語ることもあれば、ドラマの中で早々と亡くなった人物が主人公たちを見つめているような設定で、ドラマにコミットするような親しみを感じるナレーションもあるなど、毎回工夫がされている。「おしん」の最終回ではナレーションを担当した奈良岡朋子がゲスト出演するサプライズがあった。

「エール」では人気声優・津田健次郎がナレーションを担当。第1週から存在感のある語りを聞かせてくれている。

その6)一生を描くからこそ……「時代の変化」も見どころ

 朝ドラは、主人公が第二次世界大戦を体験することが多い。日本人共通の大きな喪失体験を乗り越える物語が共感を呼ぶからかもしれない。今作「エール」も主人公は明治42年生まれで、第1週は大正時代が描かれた。ここから主人公は昭和に入り、戦争を経験し、復興の祈りもこもった1964年の東京オリンピックの入場行進曲を作曲することになる。ちなみに、NHKドラマ・ガイド「なつぞら」によると明治生まれの主人公は26人。「エール」を入れると27人になるということである。

朝ドラ100作目「なつぞら」も、広瀬すず演じるヒロインが“戦争孤児”であった ©時事通信社