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「人よりほんの少し努力するのがつらくなくて、ほんの少し簡単にできること」

 そして、トドメを刺されたのが第5話(4月3日放送)。裕一の秀でた音楽的才能に驚いた藤堂先生が、彼に向けて「人よりほんの少し努力するのがつらくなくて、ほんの少し簡単にできること、それがお前の得意なものだ。それが見つかれば、しがみつけ。必ず道は開く」と語る。三郎が裕一に向けて放った台詞「なんでもいい、夢中になるもの探せ。それがあれば生きていけっから」を補完するかのように、“夢中になれるもの”はなんたるかをわかりやすくビシッと伝える。平易な言葉を用いて、真理を説く。これぞ教師の鑑。この言葉には、裕一と一緒に背筋を正して「はい!」と返事しそうになった。

連続テレビ小説「エール」公式アカウントより

 しかも、裕一以外の生徒にもしっかりと目を向けているあたりもこれまた教師の鑑。第6話(4月6日放送)では、貧しさから借金を重ねて夜逃げする魚屋の息子・鉄男(込江大牙)に「頼ることは恥ずかしいことじゃない。自分の才能から逃げるな。一生後悔するぞ」と新聞記者の名刺を渡す。詩を編むのが大好きな鉄男に言葉を綴る才能があることを見抜いての人生フォロー。それでいて「先生は逃げたの?」という鉄男からの問いには、「俺はないものを追ったんだ」と気になってしかたがない意味深な答えを返す。これで、もう藤堂先生から完全に目が離せなくなってしまった。

2016年6月、アルバム「嗚呼」の発売記念イベントで、活動休止から復帰後初めて公の場に姿を見せた。

 第7話からは関内音(子供時代、清水香帆)の幼少期パートにシフトするようで、第2週「運命のかぐや姫」ではこれ以上の藤堂先生の出番はない様子。しかし。番組公式サイトの登場人物ページには“裕一が大人になってからも良き相談相手となり、音楽の道を応援する”と紹介されているし、「俺はないものを追ったんだ」の“追ったもの”が明らかにされていないので今後も登場するのは確かな気がするが、こっちは早くも“藤堂ロス”である。彼の再登場を待ちわびたい。