男性の育休には3つの壁がある
――子育ての優先度が上がったとして、どう解決するのでしょうか?
柚木 政府の政策と大きな方向性は変わりません。「保育園落ちた日本死ね!!!」というブログが話題になりましたが、受け皿の整備は必要です。ただ、土地問題もあり、地域事情も違うため、いろんな形態があってもいい。しかし、単に受け皿があればいいのではありません。毎年、保育園では死亡事故があります。親は安心して預けたい。質を担保するためには保育士の数を増やすことが必要です。
旧民主党政権でも自民党政権でも考え方は同じ。そのために、消費税を10%にあげることになっています。現状は8%のままで、待機児童問題の予算を先食いしています。しかし、消費税を持ち出すと選挙に負けます。国や国会議員が身を切る改革は必要ですが、負担増に見合った安心増があれば、国民が理解をしてくれるはずです。現状の8%では財政再建にしか回りません。10%で初めて子育て予算の拡充が実現できます。
政府は、今年度末で待機児童ゼロという目標をあきらめました。今度は、オリンピックの年度までと言っています。財源なくして政策なし。子育て支援を実現するための財源が必要です。「こども保険」や「教育国債」といったことも十分に議論すればいい。逃げることはなく現役世代が向き合って、解決策を示していく。それが未来への責任です。
――男性の育児家事参加を促すために、国会議員が育休を取ることについてはどう思いますか?
柚木 省庁別の男性の育休取得率で、厚生労働省は2020年までに30%にすることを目標にしています。2015年度は27.25%。「一億総活躍」で掲げられている女性管理職比率を30%にしたいなら、急ぐ必要があります。
しかし、一般に男性の育休が取れないのは3つの壁があるためです。1つはお金。経済的要因です。2つ目は職場の理解、協力です。上司に「なぜ育休を取るんだ?」と言われてしまうのが現状でしょう。3つ目は制度。特に中小企業は回らない。代替要員をどう確保するか制度的な支援が必要です。
ただ、国会議員が育休を取ることは賛否両論あり、やりすぎると、足かせになるのではないでしょうか。もちろん育休の取得率は重要で最大の指標ですが、育休にこだわらず、男性が家事育児参加をすべきでしょう。
育児は大変なことですが、喜びでもあります。義務であり、権利です。男性が育児参加すると、女性の負担が減ります。これは少子化対策にもつながるのではないでしょうか。厚生労働省の「21世紀成年者縦断調査」(2002年調査)によると、夫が休日に家事や育児の時間が長いほど、2人目以降が生まれた割合が高くなっています。夫の家事育児の時間がまったくない夫婦では33.3%ですが、2時間以上の場合は84.7%が第2子が生まれています。
――地域でどう実現していくのでしょうか?
柚木 子どもを産む前から意識づけないと男性はイクメンになりません。そのため、「子育て世代包括支援センター」を提案しています。すでに地域包括支援センターがありますが、本来は子育ても含めるべきです。幼老保一体化した施設、つまり介護施設と子育て支援施設を1ヶ所にします。ワンストップで受け皿を増やしたい。
民進党内で、男性の育児休業中の補償を100%にすることを提案しました。現状は8割。5割だったのをイクメン議連で提案して実現しました。しかし、効果が芳しくないので、100%にすべきでしょう。財源は雇用保険です。同時に、男性が育休取得中でも、職場が回るように、代替要員を確保する。これを乗り越えられないと、日本の未来はありません。