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――ところで「仮設の映画館」の立ち上げは、何人でなさったんですか?

木下 私を入れて社員5名が携わりました。

――たった5人とは意外です。

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木下 うちは私含めて社員6人でやっているんですが、何を配給作品にするかも5人の合議制でやっていて、いつもと体制は変わらない感じですよ。

映画『精神0』より ©︎2020 Laboratory X, Inc

――東風さんの、ドキュメンタリー配給作品を決定する基準はどんなものなんですか?

木下 うちはあくまでも「その作品が好きかどうか」で決めています。さらに言えば「その好きな作品を観に来るお客さんがイメージできるかどうか」。中には、どんなお客さんが入るかイメージがつかないけど上映したいよね、という作品もあるにはあるのですが、私たちも商売でやっているわけで、理念だけで配給作品を選ぶことはできませんし、しません。「ドキュメンタリー映画だから、こうでなければならない」という狭い限定もしません。たとえば作品が持つテーマだけが重要とか、いかにメッセージ性があるかが大切だとか、それだけの判断基準は持たないようにしているんです。

――5人の合議制なら、上映したい人が1人、反対が4人になって、それでも押し切って1人推しの作品が選ばれる場合もあるんですか?

木下 多数決じゃないので、それもあり得ます。でも、今までそんなことあったかな……。どちらかというと、2人がやりたい派で、3人がちょっと保留、みたいなことが多いかな。ただ東風が2009年に設立されて間もない頃に、私一人が『犬と猫と人間と』という映画を推したことがありましたね。犬や猫の殺処分をテーマにしたもので、絶対に共感する人がいると信念を持って他の4人を説得したんです。

『さよならテレビ』は「結構大変でした」

――『さよならテレビ』で話題になった東海テレビのドキュメンタリー群も東風さんが配給していますよね。

映画『さよならテレビ』 ©︎東海テレビ放送

木下 今でこそ新作に注目が集まり、特集上映では立ち見が出るほどの東海テレビドキュメンタリーですが、最初はなかなかお客さんが入らなかったんですよ。映画化された最初の作品は戸塚ヨットスクールを取材した『平成ジレンマ』。2011年2月の公開で、少し話題になりかけたところで震災が起きてしまった。その後『青空どろぼう』が続き、3作目の『死刑弁護人』で大きな反響が起きた。以来、東海テレビの阿武野武彦プロデューサーから、映画化企画を提案していただける関係になりました。

 ただ、東海テレビが東海テレビ自身を取材対象にした異色の『さよならテレビ』は、あまりにも面白かったのでこちらからすぐに「ぜひ映画化を」とお願いしていたんです。

――自浄というか、身内批判というか、テレビで放送するにも相当大変だったと聞く作品が、よく映画として全国公開されましたよね。

木下 ええ、ご想像のとおり、あれは結構大変でした(笑)。