昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

今後手がける配給作品のオンライン化は?

――「仮設の映画館」ではオンライン配信に取り組むわけですが、今後、手がける配給作品のオンライン化は考えているんですか?

木下 そうですね。旧作については、より多くのお客さん、ドキュメンタリーファンを広げるためにも、たとえばDVD発売と同時にオンライン配信もして、観る機会をより増やすことは考えていきたい。それによって、取材にお金も時間もかかっているからこそ面白いドキュメンタリー作品の存在に気づく人が増えてほしい。ただ、新作については、やっぱり劇場でまずは観てほしいですね。劇場で居合わせた人どうし、同じ場面で笑ったり、泣いたり、あるいは怒ったり。そうしたスクリーンを前にした体験全体が映画を観るということだと思うんです。

映画『精神0』より ©︎2020 Laboratory X, Inc

――「仮設の映画館」にある「仮設」という言葉に込めた思いは、そこにある気がします。

木下 そうなんです。「仮設の映画館」の目標は、先ほど言ったように「閉じること」なんです。コロナの影響は、もしかしたら新作映画でもオンライン同時配信という流れを作るかもしれません。でも、映画を映画館で観る体験はずっとあってほしい。ですから、これはあくまでも仮の施設なんですよ、ということは強調しておきたかったんです。

――ところで、木下さんにとっての「ドキュメンタリー映画の傑作」は何ですか?

木下 難しい質問ですよね……。好きなドキュメンタリーはもちろん色々あるんですけど、私自身がドキュメンタリーをやりたいと思ったきっかけは森達也さんの『A』。私は大学を中退した後、日本映画学校に通って劇映画を作ろうと思っていたんです。でも、『A』を観て、自分の価値観が真逆になるような思いをしました。しかもその価値転倒が果たして自分にとって正しいものなのかどうか、わからなくなるような衝撃。まあ、森さんの手の内にまんまとハマっているわけなんですが(笑)。

――たしかに劇映画とは違った体験を、ドキュメンタリー作品はもたらしてくれますよね。

木下 ドキュメンタリーって、実際の世界へのつながりが強いだけあって、観終わった後に価値観が揺さぶられることが大きいと思うんです。それがドキュメンタリーの醍醐味だと思います。映画館を出た時に、世界が少し違って見える。そんな経験が再びできる日を待つしかありませんね。その日までの「仮設の映画館」です。

映画『精神0』より ©︎2020 Laboratory X, Inc

その他の写真はこちらよりご覧ください。

INFORMATION

 

想田和弘監督最新作 観察映画第9弾
精神0

5月2日(土)より〔仮設の映画館〕にて配信開始、ほか全国順次公開
配給・宣伝:東風

想田和弘監督による初日舞台挨拶を「YouTube ライブ」で開催!
5月2日(土)16:00~

この記事の写真(22枚)

+全表示

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー