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ウィズコロナ時代の野球界 いまこそ“プロアマの壁”を取り払おう

文春野球コラム Cリーグ2020

2020/05/15

 コロナ禍で、身の回りから次々と大事なものが失われている。

 プロ野球ファンなら、開幕から延期されている約2カ月の「時間」だ。球場やテレビの前で歓声を上げていたはずの時間は、もう絶対に戻ってこない。現時点で少なくとも、今季の20試合以上が失われてしまった。

 アマチュアでは春の選抜高校野球、社会人野球の日本選手権、「小学生の甲子園」と言われるマクドナルド・トーナメントに続き、8月に延期されていた全日本大学野球選手権の中止が決まった。

 試合だけではない。筆者の暮らす埼玉県所沢市では、西武ファンがメットライフドームで観戦後、“反省会”を行う場所として人気だった居酒屋「百味」が新型コロナウイルスの影響で閉店に追い込まれた。創業50年以上の歴史を誇り、吉田類さんが「酒場放浪記」で訪れた名店だ。

 個人的には去年のCSセカンドステージでソフトバンクに4連敗した後、やたら濃いホッピーに飲まれたのが最後の来訪になってしまった。150席もの巨大なスペースがあり、昭和のようなレトロな雰囲気で酔客を包み込んでくれた百味なくして、所沢の野球ファンは試合後の興奮をどこにぶつければいいのか。もちろん大切な人を失った方の痛みとは比べようがないが、思い出の場所を失った心の隙間は簡単には埋められそうにない。

メットライフドームで練習する西武の選手たち ©時事通信社

今後の球界のあり方も議論が必要

 新型コロナウイルスが日本全土に残した傷口はあまりにも深い。スポーツメディアも苦戦中だと聞く。某大手Web媒体によると、記事の目玉となる試合がない影響は大きく、オフシーズン中のようなPV数がずっと続いているという。「別にもう、野球の記事はなくてもいいんじゃないか」というファンの声もあるようだ。

 プロ野球は6月中旬の開幕を目指しているが、早くてもまだ1カ月以上の期間がある。この“オフ”の間、メディアはどうやって存在価値を出していくか。筆者を含めて真価を問われている。

 個人的に思うのが、そろそろ「未来」の話を皆で議論していくべきではないかということだ。開幕が延期されて以降、各メディアはプロ野球の「過去」を掘り下げてきた。名勝負や、名選手列伝などだ。語る側としても昔話は楽しく、筆者も様々な媒体に書かせてもらった。

 しかし、過去を語るだけでは何も解決しない。コロナの影響は来年以降も続くと見られる。

 野球界には難題山積だ。プロ野球は当面の間、無観客試合となることが予想され、1試合1億円と言われる入場料収入、さらに物販代が大きく減少する。となると、選手の年俸を削らざるを得なくなるだろう。

 1993年にフリーエージェント制度が導入された頃には、「プロ野球に二軍は必要なのか」という検討が球団代表の間でされたこともある。現在とは各球団の経営状況が大きく異なるとはいえ、最悪の場合、ここまで議論が再燃する可能性もゼロではない。ちなみに当時、「経営的には二軍を廃止し、外国人枠を増やしたほうが安く経営できる」という結論が出たが、日本のファンには受け入れられないだろうと見送られた。

 突然迎えた「Withコロナ」時代、今後の球界のあり方も議論が必要だろう。年始から16球団構想が注目されているなか、エクスパンションして多くの担い手でプロ野球を運営していくのがいいのか、あるいは掛布雅之さんが語って話題になったように球団数を削減する手もありなのか。プロ野球ファンにとって最も注目される議題の一つであり、固定観念を取っ払ってオープンに皆で話し合うべきだ。