〈新型コロナの流行は、今後どうなるのか。歴史から“終息までのロードマップ”のイメージを考えるのは、無駄ではありません。
“新型=未知のウイルス”である以上、完全な予測など不可能ですが、感染症の歴史から、一般に思われている以上に、多くのことが見えてくるからです〉
こう語るのは、歴史家の磯田道史氏だ。そして感染症の歴史のなかでも、とくに100年前に学ぶべき教訓があるという。
世界で4000万人以上の死者をもたらした「スペイン風邪」
〈「新型コロナウイルス」と「新型インフルエンザウイルス」という違いはあるものの、「致死率は低くとも感染力が強く一気に大規模に拡がる」という感染症としての特徴は、100年前の「スペイン風邪(H1N1型、当時の新型インフルエンザ)」のパンデミックと似ています。ですから、今回の新型コロナの“終息までのロードマップ”を考える上でも、歴史上、最も参考になります〉
世界で少なくとも4000万人以上、日本で45万人以上もの死者をもたらした「スペイン風邪」の歴史の詳細を描いたのは、磯田氏の師匠である速水融(あきら)氏だ。
その際、ポイントとなるのは、流行は1つの波では収まらなかったことだ。
「10月あたり」から第2波が来るかもしれない
〈私の恩師でもある速水融先生が『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』で詳細に描いていますが、スペイン風邪は、終息まで約2年かかり、その間、3つの流行の波が襲来しました。
「第1波」(「春の先触れ」)は、1918年5月から7月まで。
「第2波」(「前流行」)は、1918年10月から翌年5月頃まで。
「第3波」(「後流行」)は、1919年12月から翌年5月頃まで。
すると、今回も、「10月あたりから第2波が来て、来年春先まで続くかもしれない」と警戒しておいた方がいい〉