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「理髪業者にマスクをかけさせよ」 100年前の“感染症騒ぎ”は新型肺炎とそっくりだった?

「マスクのごときはどこの店でも品切れ続きのありさま」

2020/02/24

「なかでもマスクのごときはどこの店でも品切れ続きのありさま。従ってまた、例の一時ねらい奸商[悪徳商人]が出て、すでに粗悪品を売ったり、値段を暴騰させたりしている」

 これは100年前の「東京朝日新聞」の記事である(1920年1月19日朝刊5面。なお、読みやすいように一部表記を改めた。また[ ]カッコは引用者註。以下同じ)。

 当時の日本も、現在と同じく、感染症に悩まされていた。当時のそれは、「スペイン風邪」と呼ばれるインフルエンザ(流行性感冒)。1918年以降、世界的に猛威を振るい、第一次世界大戦を上回る犠牲を出したといわれる。日本では、軍隊や学校で流行し、38万人以上が亡くなった(内務省調べ)。

 画家のクリムト、社会学者のマックス・ヴェーバー、劇作家の島村抱月、建築家の辰野金吾、皇族の竹田宮恒久王らが亡くなったのも、ほかならぬこのスペイン風邪が原因だった。 

©iStock.com

マスクは「家庭で作ればよい」

 このような伝染病にたいする自衛策として、警視庁(当時、公衆衛生も担当)が推奨したのが、人混みを避けることや、うがい薬やマスクを用いることなどだった。そのため、関連商品の需要が急速に高まったのである。

「読売新聞」にも、悪徳商人たちの跳梁跋扈が紹介されている。

「利智にさとい商人たちは、截(た)ち落としの黒繻子や、輸出羽二重のくず切れでマスクを作り、三十銭、三十五銭で売っておりましたが、それでも飛ぶように売れるに味を占めて、六十銭、六十五銭と値上げしたさうです」(1月18日朝刊4面)。

 まるで「転売ヤー」の振る舞いだが、それへの対応も現在とそっくりだった。すなわち、自家製マスクの普及がそれである。

「朝日新聞デジタル編集部」のツイート

 

 警視庁は、簡易なマスクの作り方をさっそく考案して配布。「読売」もさきの記事で、「こんなもの[粗悪品]は金銭を出して求めるまでもなく、家庭で作ればよいので、戸板裁縫女学校では、各自に作らせて用いております」として、マスクの作り方を詳しく取り上げた。