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「理髪業者にマスクをかけさせよ」 100年前の“感染症騒ぎ”は新型肺炎とそっくりだった?

「マスクのごときはどこの店でも品切れ続きのありさま」

2020/02/24
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「こいつ、マスクしていないぞ」問題

 もっとも、このような啓発活動にもかかわらず、マスクの使用はかならずしも徹底されなかった。

 ある電話局の局長は「朝日」の取材に、「マスクは嫌だという、若い女には困りますよ」と嘆いている(1月23日朝刊9面)。マスクは「体裁が悪い」として、とくに女性に不人気だった。それ以外でも、人混みの電車では「暑苦しい」としてせっかくのマスクを外してしまうものもあった。

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 つぎつぎに犠牲者が出て、工場が閉鎖され、交通・通信が麻痺しているのにこれなのだから、当時の日本人は豪胆というか、怖いもの知らずだった。

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 もちろん、マスク不使用を非難する声も読者投稿欄に寄せられた。「[鼻がつまっている人は、]人造の予防マスクをかけたらどうか。自分のためばかりじゃない。公衆衛生の立場からもだ」(「朝日」1月17日朝刊3面)。

「読売」の読者投稿欄には、いささか時期が遅いけれども、「理髪業者にマスクをかけさせよ」という具体的な主張も掲載されている。

 この投稿者は、先日床屋で、せきをしながら仕事をしている男を見かけた。これでは感染が広がってしまうかもしれない。それだから、「理髪業者に顔剃りの場合マスクをつけさす」ようにしてはどうかというのである(10月2日朝刊4面)。

 100年前は新聞投稿だが、現在では、スマホで盗撮して、SNSにアップロードすることなどが懸念される。「こいつは、マスクをしていないぞ」と。

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 先日も、福岡市で「せきをしているのにマスクをしていない人がいる」として、地下鉄の非常通報ボタンが押されるトラブルがあった(「マスクせずにせき』乗客が非常通報 福岡・地下鉄車内でトラブルに」「西日本新聞」2月20日)。マスクをめぐるマナー問題は、けっして過去の話ではない。