文春オンライン

小説は特別なものだし、絶対にいいものでなければならないと思っています――中村文則(2)

話題の作家に瀧井朝世さんが90分間みっちりインタビュー 「作家と90分」

2016/07/31

genre : エンタメ, 読書

note

読者からの質問「中村さんの作品は、実生活の体験をもとにしたものが多いのでしょうか?」(20代女性)

●中村さんにとっての“生きる”ということに対しての考えを聞きたいです。(20代男性)

中村 小説にも書いているんですけれど、命を使うことなんですよ。自分の命というものをどう使うかということですね。何かになりたいならそれを目指す。別に何も目指していないんだったら、自分が楽しい気持ちになれるよう生きる。『教団X』にも書いたような感じですね。短く答えるのは難しい質問なので、この問いに答える小説としては、『何もかも憂鬱な夜に』と『教団X』でしょうか。

何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)

中村 文則(著)

集英社
2012年2月17日 発売

購入する
 

●中村さんが作家志望の頃、賞に出す小説を書き上げることができたのは、どういった思いによると思いますか? それと、ファンレターは出版社さんに送ればよいのでしょうか?(20代男性)

ADVERTISEMENT

中村 インタビュー中にも話しましたが、今の現代文学のシーンとかを考えずに、自分のやりたいことだけやった、というのが僕の受賞のきっかけです。おそらく昔の文学をたくさん読んでいる25歳の青年が珍しくて、その個性というものもあったのではないかと思います。結局その人の読書傾向はその人の個性や人生というものに関わってくる。自分が受けた影響を自分なりにどう咀嚼して書くかということが大事ですね。

 お手紙は僕が本を出している出版社さんに送っていただければ届きます。お返事は難しいですけれども、全部読んでいます。

●最近読んで面白かった小説はありますか。(20代男性)

中村 カズオ・イシグロさんの『忘れられた巨人』です。

●中村さんの作品はリアルで痛くて大好きですが、読後、暗い気持ちから抜けられないことがあります。書かれている時に、そのような状態になることはありませんか。もしあれば、その時はどうやって抜けられますか。(30代女性)

中村 僕の場合は慢性的に暗い気持ちだから、抜けるとかじゃないかな。ただ気分転換としては散歩してますね。あとはお笑いがいいですよ。お笑いというのは面倒くさい僕の意識を超えてダイレクトにくる。条件反射的に笑いというものが起きるんです。お笑いをずっと見ていたりすると、気が付くと忘れていたりする。そういう時間は結構大事ですよ。

●中村さんは今まで出会った本のなかでガツンと来すぎて飛びそうになった本はありますか?(30代女性)

中村 『カラマーゾフの兄弟』です。

●中村さんが幸せを感じる時ってどんな時ですか? 詳しくお願いします!(30代女性)

中村 性的な妄想をしている時かな。いや、詳しくはあまり言わないほうがいいですね(笑)。

●中村さんの作品は、実生活の体験をもとにしたものが多いのでしょうか?(20代女性)

中村 自分の内面の体験をそのまま書いているものもあるけれど、フィクションにすることでよりその本質に近づけているところはあります。『何もかも憂鬱な夜に』の真下君のノートは、自分が高校生の時に書いていたものが入ってますね。

関連記事