昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/05/27

安倍政権の経済対策はどこで失敗したのか?

――3月20日〜22日の3連休については「気の緩み」などと指摘する声も聞かれました。しかし、その一方で「補償なき休業要請」「補償なき自粛」に対する批判も少なくありません。日本の経済対策については、どのように評価されていますか。

リプシー 新型コロナが及ぼす経済的損失の大きさを考えると、日本も含む多くの国で、経済的補償は不十分です。ただ、日本の経済的補償はGDPの12%という水準であり、主要国に見劣りしません。米国やドイツよりも多いぐらいの水準です。しかし、イメージ戦略が失敗したのではないかと思います。

トロント大学のフィリップ・リプシー准教授

 たとえば私が住んでいるカナダでは、トルドー首相がほぼ毎週テレビに出て、新型コロナと闘うための新たな経済的補償や政策を発表しています。これらは、日本の「GDPの12%」という値よりは数字的に少ないものの、首相が頻繁にコミュニケーションをとり、次々と政策を発表することによって、政府が常に新型コロナ対策に取り組み、新たな戦略を打ち出しているというイメージを広めることに成功しています。

 また、カナダでは給付金もとても迅速に配布されました。カナダ緊急対応給付金(CERB)の申請はとてもシンプルで、ほぼ瞬時に振り込まれます。この簡易性が詐欺(偽の申請など)の危険性を高めるという面はありますが、危機下においては、給付金を速やかに届けることの方が、詐欺を防ぐことよりも重要だと政府が判断したのです。ちなみに、詐欺を働いた人間に対しては、確定申告の際などに、後から懲罰が与えられるという仕組みになっています。

“課題先進国”を襲ったコロナ危機

――なるほど。経済補償の規模は世界水準であるものの、そのスピードと情報発信において日本政府は躓いているのではないか、という分析ですね。

リプシー はい。しかしその一方で、日本が「コロナ失敗国」というレッテルを張られることがあっては不公平です。日本の国際的な評判が傷つくうえ、そもそも客観的なデータに基づく正確な描写ではありません。

緊急事態宣言が解除され、東京では少しずつ人出が戻ってきた(5月26日撮影) ©AFLO

 私はいつも学生たちに、日本のことを学習し、日本から学ばなければならないと教えています。なぜなら日本はこれまでに幾度となく、そして他国より先に、重大な課題に直面してきた国だからです。たとえばバブルや金融危機、高齢化社会、中国の台頭といったものがこれに当てはまります。そして“コロナ・パンデミック”も、その一例と言えるでしょう。

 日本政府には、国際社会に対して積極的にコミュニケーションをはかり、自国の政策や経験を共有し、世界がより良い対応策を導入できるよう協力していってほしいと思います。

この記事の写真(5枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー