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リプシー 確かな理由はまだ解明されていません。BCGワクチンの効力が関係していたり、あるいはアジアでは過去に似たウイルスに接触し、免疫が多少あったというようなことがあるのかもしれません。しかし、日本政府の対策から、世界が学ぶことは多いと思います。日本は早い段階から感染者の接触追跡に注力し、クラスター感染を阻止しようと「3密を避ける」ことを徹底してきました。こうした戦略は、今後世界が前進する上で、改めて必要になるものです。

支持率が下がったのは「日本とブラジルだけ」

――そうした中でも、日本では安倍首相に対する支持率が下がり続けています。

リプシー 日本の状況は特異だと言えます。各国のリーダーの支持率は、コロナ危機を通して、そのほとんどが上昇しています。ドイツのメルケル首相の支持率は80%に達しました。また、韓国の文在寅大統領は4月の選挙で地滑り的勝利を収めています。新型コロナが猛威を振るったイタリアでさえ、コンテ首相の支持率は70%に上昇しました。大国のリーダーで支持率が下がったのは日本以外だとブラジルのボルソナロ大統領くらいです。しかし、ブラジルの感染状況は日本よりも遥かに深刻です。

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支持率を急上昇させたドイツのメルケル首相 ©AFLO

――では、なぜ日本では安倍首相の支持率がこれほど下落しているのでしょうか。

リプシー 今回のコロナ危機のような非常時において、人々はリーダーの決断力と透明性を高く評価する傾向があります。しかし日本では、経済対策や緊急事態宣言といった重要な局面において、政府の意思決定が迷走し、優柔不断であるという印象を与えてしまいました。また、これは専門家のアドバイスによるものだと思いますが、日本はPCR検査を比較的「高リスク」の患者に限定したことで、「政府が何かを隠そうとしている」という疑念を抱かせてしまいました。

 さらには、世界でパンデミック(爆発的感染)が起こっている最中に、検察官定年延長という危機対応と関係ない法案を取り上げたことでも、「政府は重要課題に焦点を合わせず、注意散漫だ」との印象を与えてしまったのではないでしょうか。

日本人が経験した“タイミングのズレ”

――一連のツイートの中では、日本は他国とは違うサイクルで新型コロナ対策を行っている、とも指摘されていますね。

リプシー 日本は他の主な国々よりも早い段階で新型コロナへの対応を始めました。その意味で、他国とは異なったタイミングで、異なった段階を迎えているのです。

花見ができないように一部閉鎖された上野公園(3月27日撮影) ©AFLO

 たとえば、西欧諸国が都市封鎖などを始めようとしていた3月の時点で、日本の人々は既に「巣ごもり疲れ」の段階にありました。3月下旬の週末には、多くの人が買物に出たり、埼玉では6000人も集まるK-1の試合まで行われました。

 すると、その直後から他国では感染者数が減少に転じるなか、反対に日本の感染者数は増加していったのです。このことは、多くの日本人に「日本の対応は外国と比べて貧弱だ」という印象を与えました。世界的に見れば、感染者の絶対数は少ないにも関わらず、です。