「顧客データが」「押印業務が」
「個人情報保護の問題で顧客データを持ち出すことができず、テレワークができない」「基準書やマニュアルを会社から持ち出すことができない」「3月期決算で、紙の書類をチェックしたり、押印業務を行ったりすることができない」
ある大手金融機関では、PCの前から離れると自動的に感知されて本社に伝わる仕組みが採用され、「トイレに立つのも10分がせいぜいでプレッシャーがきつい」(30代女性)という。別の大手金融機関の管理職は、「私の会社はPCをしばらく放置していると、表示が『対応可』から『非接続』に変わります。あまり厳しくはしていませんが……」。
このアンケートでも、「PCの状況が本社に伝わる時に、「『対応可』『会議中』『PC停止中』以外に、『少し時間がかかりますが対応します』などを発信できるようにして欲しい」という要望が少なくなかった。
はっきりした「テレワークに向いていない人」
管理職からは苦情が来た。
「部下の業務プロセスを逐一チェックすることが難しく、納期を前に確認すると、自分で業務を進めている部下と、業務が全然進んでいない部下に大きく分かれていた」
コロナ禍を機にテレワークを導入した企業はまだ2カ月あまりのため、業務の改善・成績の向上・テレワークで優秀な人材の特徴などはまだ見えてこないという。
しかし、大手メーカーの管理職の女性は「テレワークに向いていない人はハッキリ見えてきました」と言う。
「1つは、常に横にいて細かく指示を出さなければいけない人。グループチャットは作っていますが、いちいち書き込んだり、メールを送ったりするのは手間がかかり過ぎる。仕事が進んでいるかどうかの雰囲気も察知できないし、フォローが難しい。指示を待つ人はテレワークに合いません。
もう1つは段取り。Web会議は長時間できないため、段取りを組まずにダラダラと会議を進める人は向きません」(管理職の女性)
これまで評価されてきた人が一転する可能性もある。
「一生懸命に残業していた人や、常に会社にいる人が評価されてきた面がありますが、テレワークが普及すれば、アウトプットできたものへの評価に変わるでしょう」(同)
今後は「テレワーク格差」が生まれる?
長い目で見れば、テレワーク導入の可否による格差が生まれる可能性もある。
「私の会社はテレワークを当面併用しますが、他社の人と話していると導入するか否かは二極化するようです。今後、少子化で労働人口が減る中、仕事をしながら育児や介護もできるテレワークに対応できない企業は敬遠される。テレワークに対応している企業に優秀な人材が集まるかもしれません」(前出・大手金融機関の管理職の男性)
緊急事態宣言が解除された後、福岡の北九州市ではクラスターが発生した。6月2日、東京都では約3週間ぶりに30人を超える34人の感染者が出た。第2波、第3波が来ればテレワーク再開が確実。テレワークから逃れるのは簡単ではないだろう。
東京の大企業に勤めながら、九州の古民家で暮らす。こんな軽々とした人が今後何人出てくるのだろう。