宇佐美じゃなくて宇佐見、そんなLINEが飛び交った夜
その夜、知り合いの巨人ファンから数多くのLINEやメールが届いた。
先週の8月18日夜の出来事だ。DeNA戦、同点で迎えた延長10回裏2死二塁に飛び出した背番号52のあの一発。「今季ベストゲーム!」「宇佐美サヨナラ弾!」とかそんな内容で、俺は「いや宇佐美じゃなく宇佐見だから。宇佐見真吾!」「ウサミーソーサ爆誕!」なんつってベタな返信をしながら、何度も繰り返し宇佐見が放ったサヨナラホームランの映像を見続けた。
なんで巨人ファンはあんなに喜んでいるんだ? もしかしたら他球団のファンの方々は謎に思ったかもしれない。すでに首位広島には大きく離され、Aクラス争いも阪神とDeNAに後れを取っている。誠意っていったい何かね……みたいな厳しいペナントレース。なのに、2年目の若手が放ったプロ初アーチとなるサヨナラ弾に涙を流さんばかりに歓喜しているフライデーナイト。別に宇佐見と知り合いでも何でもないのに、いったいどうして自分はこんなに嬉しいのだろうか……。冷えたコーラで頭をクールダウンして考えてみたら、その理由は大きく分けて3つあった。
まずこの本塁打が「チーム生え抜きの25歳以下選手が放った今季初アーチ」だったこと。さらに宇佐見が「15年ドラフト指名選手」だったこと。そして待ちに待った「小林誠司以外の若手捕手の出現」である。
巨人ファンが宇佐見のサヨナラ弾に熱狂した3つの理由
宇佐見真吾は93年6月4日千葉県生まれの24歳。右投左打の“打てるキャッチャー”として城西国際大学から15年ドラフト4位で巨人入り。今月8日に1軍デビューしたばかり。本人のTwitterでも度々触れられているように大のももクロファンで知られる男が、16年シーズンから続く「巨人生え抜き25歳以下選手の本塁打0」という記録を終わらせた。平均年齢が異様に高いスタメン陣にももう慣れたなんてボヤく夏。開幕前、若手のチャレンジ枠と言われた二塁も気が付けば恐怖の2番打者マギーさんが君臨する諸行無常。今季は日本ハムから移籍してきた石川慎吾がすでに5本塁打放っているが、近年のドラ1コンビの岡本和真や吉川尚輝は現在1軍にすらいない。まさに生え抜き若手野手は、ほぼ全滅という状況の中での起死回生の一撃だったわけだ。
さらに宇佐見は苦戦が続く15年ドラフト生としても意地を見せてくれた。2年前の秋、球団が賭博事件に揺れていた事実を差し引いても、あまりに寂しい巨人15年組のリアル。1位の桜井俊貴はいまだ勝利なし、今季も中継ぎとして防御率4点台後半の数字を残して2軍降格。2位の重信慎之介も主に代走として起用される日々。その年の最上位指名の大卒投手と大卒野手が、2年目から中継ぎと代走っていったいどんなドラフト戦略だよと突っ込まずにはいられないこの感じ。だから、そんな目の前のあらゆるモヤモヤを吹き飛ばしてくれた宇佐見の劇的なサヨナラ弾に東京ドームは熱狂したのである。