脱力してしまう記事があった。
「東京アラート」を都が発動した日、お台場では夜になって前日より人が増えていた。その理由として、
「赤いライトアップ見物か」(産経新聞6月4日)
本末転倒ではないか。
お台場と芝浦を結ぶレインボーブリッジが赤くライトアップされ「見物客の姿もあった」という。いかにも見栄えを重視する小池百合子都知事の「対策」っぽい。
本当の意味での東京アラート『女帝 小池百合子』
しかし都民にとって本当の意味での東京アラートはこの本だ。
石井妙子『女帝 小池百合子』(文藝春秋)である。帯は「救世主か? “怪物”か? 彼女の真の姿。」
《小池氏には、1992年に日本新党から政界に打って出て以来、幾度となく疑惑の目を向けられる「学歴詐称」疑惑がある。これについて、ノンフィクション作家の石井妙子氏が、小池氏とカイロで共に暮らし、小池氏のカイロ大学生活を誰よりもよく知る元同居人女性の早川玲子さん(仮名)から詳細な証言と当時の手帳や写真などの資料提供を得て取材をし、「小池さんはカイロ大学を卒業していない」との詳細な証言を得た。》(「週刊文春」6月4日号「『カイロ大学卒業は嘘』小池百合子東京都知事の学歴詐称疑惑 元同居人が詳細証言」)
読みすすめていくと、著者が一貫して使っている表現に気づく。それは「物語」だ。カギカッコ付きの。
小池氏はこれまで私的な「物語」をマスコミを通じて売りにしてきた。その「物語」があればこそ現在の地位も築けたようにみえる。石井氏の入念な取材により学歴詐称疑惑はあくまで象徴の一つにすぎないことがわかる。
特異な環境で養われた「強さ」
《ウソにウソを重ねて物語を作っていると思いました。》
石井氏は直近のインタビューでこう語っている(日刊ゲンダイ6月5日付)。
本書によると、小池氏は小学5年生の時には校内の弁論大会で優勝、題は「
豊洲移転問題で知事は「盛土」について騒いでいたが、何のことはない、いちばん盛っていたのは小池百合子だったのである。
なぜそうなってしまったのか。
《彼女は10代の頃まで非常に苦労が多かった。家が経済的に安定していないとか、親が多額の借金をつくって借金取りが取り立てにくるという状況で生きてきたわけです。生まれつき顔にアザがあったこともあり、物心ついた時から「普通の人生は送れない」と言われることもあった。幼い頃から気を張っていなければならない環境で生き、心が休まることもなかったのかもしれません。》(日刊ゲンダイ・同)
だから上り詰めて自分を強く見せないといけなかった、と。
しかしその特異な環境で養われた「強さ」は、ウソを平気でついたり、人として何かが欠落しているおぞましさがある。本書のあちこちで見かける。