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もう菊池雄星を頼らない……西武・高橋光成初登板、意志と責任が見えたあの場面

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/06/27

ここから一段ステージを上がるために必要なこと

 2019年は菊池に手を差し伸べてもらうことで大きく変化することができたが、しかし、ここから一段ステージを上がるために――チームを代表するエースになるため――彼にはやるべきことがある。

 昨季の高橋光がそれまでの低迷を脱し、自分を変えることができたのは、菊池が用意したレールに乗ったにすぎない。ここからエースに昇り詰めるには、自分で考え、自分で乗り越えなければいけない。もし、菊池と同じようにメジャーへの夢があるのだとしたら、憧れの先輩と同じことをやっていたら、その位置まで到達することはないだろう。メジャーはもちろん、エースにはなれない。

 少し宗教じみた表現になるが、今の高橋は「守破離」で言えば、「守・破」を終えたところにいると言えるかもしれない。菊池の教えを守り、パーソナルトレーナーの意図を理解して、自分を変革することに成功。その技に磨きをかけてきた。そしてこれからは、流派を離れて自分自身で新しいものを見つけ出していくのだ。

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 それは菊池のもとを離れろという意味でも、今までやってきたことをひっくり返せと言うことでもない。レールを用意してもらうのではなく、自分自身で生きていく道筋を作っていく必要がある。

 もっとも、6月23日の今季初登板は「エース」と呼べるような内容ではなかったとはいえ、高橋光自身が更なる高みへ向かおうという姿勢を垣間みた。

捕手だけに責任を持たせないという姿勢

 捕手・森のサインに首を振る回数が目立ってきたのもその一つで、投球に自分で責任を持とうという姿勢が芽生えてきている。特にこの試合で目を引いたのは、柳田悠岐に対して向かっていく姿勢だった。

 1回表の第1打席では、カウント3−2からインコースにまっすぐ勝負。完璧に捉えられ二塁打をくらうのだが、変化球に逃げない姿勢は2打席目に生きる。3回、初球から2球連続150キロ超えのストレートを懐に投げ込んだ。死球すれすれの投球になり、柳田に睨み付けられるほどだったが、3球目はそのインコースに縦のスライダーを投じて左翼フライに抑えたのだ。「曖昧なボールはいい結果を生まない」。自分のピッチングスタイルに、強い意志が生まれていることの証左だろう。

 また、味方が4得点した直後の3回表に2点を奪われて首脳陣から酷評されたが、決して意図がなかったわけではない。

 この日の試合を通して貫いたことの一つとして、打者によって強弱をつけるピッチングがあげられる。3番・柳田、4番・バレンティンにはとにかく全力で投げ、他の打者にはうまく組み立てようとしていた。それを上手にまとめようとしすぎた分、制球が乱れたのだが、ピッチングの意図としては明解だった。

 聞けば、「自分が納得したボールを投げることを選んだ」とのことだ。それはつまり、どの投球にもしっかり意図を持ち、リードする捕手の森だけに責任を持たせないという姿勢に他ならない。

 もっとも、この日のピッチングは及第点に届いた程度で、エースへの道のりは程遠いのは事実だ。

 今季を通じて高橋光が追うべきテーマは、独自のピッチング、そして自分自身を確立できるかだろう。

 菊池を頼った2019年から、次なる階段を昇るための1年になる。

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