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原辰徳は令和の深作欣二なのか!? ヤングジャイアンツたちの「仁義なき戦い」

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/06/30
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男の人生の行く末など、誰にもわからない(近藤唯之)

「全くその通りだよな」

 6月上旬、ほぼ無人の東京ドーム22ゲート前にて、思わず独り言を呟いてしまった。本当ならばこの日、交流戦で日ハム戦を観ているはずだったのに……。1億円プレイヤーになった太田泰示はともかく、ビヤヌエバと宇佐見が元気でやっててくれれば、それで良かったのに。

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 プロ野球とセンバツの無い春は長く、寂しく、苦しかった。

 ネットで長嶋茂雄引退試合を見ても、原監督と元木ヘッドのインスタライブで笑ったりしても、どこか憂鬱な春だった。

東京ドーム22ゲート前 ©伊賀大介

プロ初打席、決死の送りバントに未来を見た

 がしかし!! とにかく、プロ野球は帰ってきた。

 ずっと語り継がれるであろう、6・19東京ドームでの開幕戦。

 神宮も横浜も試合が出来て本当に良かった。

 この日ばかりは12球団で6試合やらないと意味がないだろう!!と、みんな感じていたと思う。

 確実に同じ人が考えたでしょう、という「イチローを、見ないのか」に続く「この瞬間を、待っていた」のコピーも今日は愛おしい。

 マジで14時59分に決まったかどうかは知らんが、キャプテン坂本勇人も無事にスタメン出場。エース同士にして元・自主トレ仲間という菅野と西の緊張感溢れる投げ合いにシビれ、西のポール直撃弾に頭を抱え、テレビ観戦ながら手に汗を握った。

 終盤での吉川尚の芸術的な内角打ちは、去年5月の中日戦での、岡本のラッキー天井安打~陽岱鋼初球レフト弾~ロメロブチ切れてターン&グラブ投げの、流れる様な一連のムーブを思い起こさせる様な名シーン。

開幕戦で逆転2点本塁打を放った吉川尚輝

 いわゆる一つのナイスゲームってヤツですが、しかしこの日、俺的に最もグッと来たのはその直前!!

 石川慎吾が気合いのライト前単打で出塁した後、『プロ初打席が代打・しかも絶対決めないとめちゃくちゃガッカリされる場面の送りバント』という、パワプロのミッションの様なデビューを果たした、売り出し中の湯浅大(ガッツポーズ可愛かったなー)ら、いわゆる脇役がガムシャラに繋いでいこうとする場面こそ、今年の巨人で心底見たい光景であった。

 ここで思い出したのは、この何日か前に銀座・丸の内TOEIにて観た一本の映画である。このコロナウイルス禍の中、東映の名プロデューサー・日下部五郎追悼上映と名を打って上映されていたのは、伝説のヤクザ映画『仁義なき戦い』であった。

 しかもシリーズ全5本と、オマケに「県警vs組織暴力」(『北陸代理戦争』に並ぶ、超・傑作!!)という、東映の気概を感じるラインナップであった。

 菅原文太、小林旭、梅宮辰夫らキラ星の如き輝くスター達の魅力は言わずもがな、当時破竹の勢いであった深作欣二の演出と、筆が乗りまくった笠原和夫の脚本が絡みあい、爆発的なヒット作になった『仁義なき戦い』シリーズ。

 この東映実録路線に一種の異様なテンションをもたらせたのは「ピラニア軍団」に代表される、斬られ役の大部屋俳優たちの情念である。

「今までの任侠映画とは違うものを作るんだ!!」というスタッフの熱量がそのままフィルムに焼き付けられ、「隙あらば喰ってやる!!」と、目をギラつかせ、身体を張りまくった脇役達の奮闘によって、スターは更に輝きを増した。

 監督・深作欣二は後に”日本一の斬られ役”となる大部屋俳優・福本清三に「主役は放っといても芝居しよる。だけどこの映画は、集団劇なんや! 皆が動かんと映画が死んでしまうんや!!」と、熱く語ったという。

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